アーチェリー・ウエシゲペアと末武コーチ、最強チームのホンネ鼎談!
アーチェリーの上山友裕・重定知佳の「ウエシゲペア」は、2人を支える末武コーチを含めた3人でワンチーム。3人は常に明るく雰囲気バツグンで、結果を出しているのも納得です。チームワークのよさの秘密を探るべく、今回は、お互いの素顔をたっぷり語ってもらいました。
服の色はだれが決めた?
――パリをイメージして、3人にはフランス国旗の3色を1色ずつ分担して着てきていただきました。色の担当はどのように決めたのですか?
重定知佳選手(以下、重定): この服は私の推し、三代目JSBの今市隆二くんがプロデュースしているアパレルブランドのものなんです。この服をどうしても着たい。この服は白だから、私は白でって。
上山友裕選手(以下、上山): 僕、たしか最初は白って言われたのに、変わったのはそういうわけだったのか……。
――上山選手が赤にしたのは、所属企業をイメージして?
上山: いや、白じゃなければ赤だなと。実はこれ、(プロ野球・日本ハムファイターズの)新庄剛志監督が監督になって最初のキャンプに着ていたのと同じものなんです。もちろん、自腹で買いました。ぶっちゃけ高かったです、ジャージなのに。
――じゃあ、末武コーチは……。
末武寛基コーチ(以下、末武): 青で、と連絡が来たので。青の服はこれしか持ってなくて、白の方がたくさん持ってるんだけどな、とは考えたんです。でも、写真の立ち位置を考えて、全員、ピンポイントで色を指定されたんだろうと思ってました、今の今まで(笑)
――奇跡的に国旗にピッタリの青で、ありがとうございます(笑)
いいところも弱点も知り尽くして
――末武コーチから見て、2人のいいところを教えてください。
末武: 上山さんは、面白い。ザ・関西人です。僕は18年間佐賀で過ごして、大阪にある近畿大学の洋弓部に入ったのですが、意外とまわりに関西人がいなくて。1回生のときに、4回生の先輩に紹介してもらって同志社大学の上山さんと出会ったのですが、大阪の人って本当に面白いんだって、インパクトがすごかった。どの辺が面白いかと聞かれると、答えられないんですけど。
上山: トークのテンポじゃない?
末武: そうかも。次、重定さんですよね……。
重定: 悩んでる(笑)
末武: いやいや。重定さんは、面倒見がすごくいいんですよ。ものすごく気をつかうタイプ。日常生活はこのままでいいと思います。これがプレーに出ると、ちょっと弱点になっちゃうこともあるんですけどね。
――では、そのまま2人の弱点を聞きましょうか。
末武: 重定さんは、もっと自己中になっていい。競技中は自己中で、競技以外のところでは他の人のことを気づかえるのが一番理想的かな。
重定: そもそも人と関わるのがあまり得意じゃないんですよ。家にいる方がいい。でも、電話はします。すぐ聞きたいから。LINEはしませんけど。
上山: 重定さんと話すと、長電話になっちゃいます。すぐ切ろうと思って電話しても、ああだこうだしゃべって、はっと時計を見たら、1時間4分も経ってた!って感じで。
末武: 重定さんと僕も、電話は長めですね。1つの用件で15分ぐらい話すし、話し終わっても、「あ、そういえば」っていうのを何回も繰り返しちゃう。
上山さんの弱点は……、ずっとしゃべってることかな(笑)
あと、弱点ではないけど、いいですか。みなさん、案外知らないんですけど、上山さんって身長が180㎝あるんですよ。だから、新しいキャッチコピーとして、チェストガードに「実は身長180cm」って書いたら?
上山: そのために5000円使ってどうする(笑)
末武: では、「妻子持ち」。
上山:なるほどな、面白いですね。
末武: 指輪してないから、気づかれにくいんですよね。
上山: これ、ホンマのことなんですけど、指輪してないのはアーチェリーのためなんですよ。親指に力をぐっとかけて撃つんですど、指輪を着けているとそこにすごく意識がいっちゃって落ち着かない。これあかんわ、と思って外したんです。で、東京が終わった後、別にどこに意識が行ってもええわと思って指輪を着けようとしたら、今度は指が太くなって、着けられなくなってしまいました。指輪は、僕が小学校のときに使ってた机のでっかい引き出しにしまってます。
末武: 重定さんも手や指に何か着けているとダメなタイプですよね。
重定: 私は手首。気になるから、時計ができません。
末武: そういうアーチャーは結構多いです。
――では、2人から見た、末武コーチのいいところは?
重定: プライベートを知らないからな。
末武: ですよね。遠征先でも、一緒にご飯に行くこともほぼないし。
上山: では、僕が。末武コーチは、人を観察する力がすごい。人の仕草とか性格とかを見てる。だから、ものまねがめっちゃうまいんですよ。だからこそ、気もつかえる。今こうやったらあかん、これやったらいい、みたいなのがわかる。これでよろしいでしょうか(笑)
末武: はい(笑)
「楽しかったね」と言える大会に
――では、最後にパリの目標は。
上山: 何色でもいいので、メダルが欲しいです。世界選手権もアジア選手権も獲ったけど、まだパラリンピックのメダルは持ってないので。重定さんのおかげで、個人でもペアでもメダルを目指せますし。
――重定さんも同じ?
重定: そうですね。
末武: 僕はね、振り返ったときに「楽しかったね」って笑顔で言える大会にしたい。東京はそうじゃなかった。悔しさと「たられば」が押し寄せてきたんですよ、僕の中で。でも、「あのとき、面白かったよね」って思い出話ができる大会では結果を残してるので、パリをそういう大会にできればと思っています。
というのも、今年の国際大会は、「楽しみましょう」ってずっと言ってて、実際、ずっとみんな笑ってたんです。そのおかげで、すべての国際大会でメダルを獲れましたし、年間を通して一番いい成績を残せました。この状態のままパリに行ければベストかなと思っています。
――パリでウエシゲ旋風を巻き起こすことを楽しみにしています!
リカーブ男子。好きな女優は井上真央で、テレビドラマ『花より男子』のビデオを重定から贈られた。遠征先では、重定と一緒にオンラインゲームFortnite(フォートナイト)をすることもある。
リカーブ女子。趣味の釣りは、アーチェリーを始めたタイミングできっぱりやめた。「全然興味がなくなった」ので、釣り道具は末武コーチにゆずった。現在の趣味はゲーム。上山の長男とFortniteで遊ぶことも。
日本身体障害者アーチェリー連盟リカーブコーチ。2011年第26回ユニバーシアード(中国・深圳)男子団体2位など、健常のアーチェリーでトップ選手として活躍。お笑い好き。最近、うれしかったことは「一番推している千鳥に会えたこと」。
text by TEAM A
photo by Hiroaki Yoda