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バドミントン
125連勝&2連覇、バドミントン梶原大暉にみなぎる自信の根拠
「日本の宝」にとって、2つ目の金メダルは、完成形を探し求める道の途中に手にしたものでもある。9月2日に行われたバドミントン男子シングルス(WH2/車いす)で、梶原大暉が東京2020パラリンピックに続く連覇を果たした。
仲間たちも観戦「見ていて楽しい」
大会前、22歳のエースはこう語っていた。
「フィジカル面、技術面、戦術面、どれもレベルアップしていて、3年前とは見違えるほど成長していると思う」
パリ2024パラリンピックでは、その言葉を証明するような圧倒的な戦いを見せて頂点に立った。
試合の最初から最後まで、常に小刻みにポジションを修正しながら相手の攻撃に備えられる体力。思い通りのショットを打つためのベストポジションに、余裕を持って到達できるスピーディーなチェアワーク。多彩なショット。
WH1の女子シングルスでパラリンピック連覇を飾った里見紗李奈は「(梶原)大暉は絶対に勝つ(優勝)と思うから、自分も負けられないと思っていた。今、(バドミントンの)車いす男子は『パラリンピックって面白いな』と思うような試合を見せてくれていて、私も見ていて楽しい」と大いに刺激を受けていた。
梶原と同じWH2で、今回のパリパラリンピックが初出場だった松本卓巳は、男子シングルス1次リーグで梶原と対戦(4-21、18-21)し、「本当に日本の宝ですよね。もっともっと頑張って練習して、だれも手も足も出ないよう、強くなってほしいです」と感嘆混じりにエールを送るほどだった。
パラバドミントン勢の期待通りの試合を、梶原は決勝トーナメントでも見せた。
準決勝は、韓国の金正俊に21-17、21-9のストレート勝ち。決勝では、香港の陳浩源を相手に第1ゲームの出だしから7連続ポイントを奪って21-10。第2ゲームもまったく危なげない展開で21-10。金メダルが決まった瞬間、梶原は拳を握りしめ、さらには両手を突き上げて力強いガッツポーズを繰り返した。
梶原の決勝戦は、日本チーム全体の大トリだった。会場には選手、スタッフがそろって応援に駆けつけて22歳のエースを後押し、最後は全員が笑顔だった。
敵なしの強さも本人にとっては「未完成」
福岡で生まれ育ち、軟式野球チームの投手として全国優勝を目指していた中学2年生の夏、交通事故に遭って右ひざ下を切断。高校1年生になって出会ったのがパラバドミントンだった。東京2020パラリンピックへ向けて有望選手を発掘するために、日本パラバドミントン連盟が張り巡らせていたアンテナにキャッチされ、2018年に強化指定選手に。コロナ禍前だった2019年に多くの国際大会に出場する機会を手にして実力を磨いた。
パラリンピックで初めて正式競技となった2021年の東京大会で、日本勢は金メダル3個、銀メダル1個、銅メダル5個を獲得し、日本のパラスポーツ界、世界のパラバドミントン界に存在感を示した。19歳でシングルスの金メダリストとなり、村山浩と組んだダブルスでも銅メダルを手にした梶原は、日本を代表する選手へと立場を変えた。
パリ大会では、重圧もありながらの連覇達成。
「プレッシャーは感じていたし、緊張もしていた。でも、うまくそれらをコントロールできた。東京大会からの3年間、やってきたことを惜しみなく出せたと思う」と語る表情は誇らしげだ。
パリ大会前に積み重ねていたシングルスの連勝記録「121」は、今大会4勝を加え、「125」まで伸びた。
憧れの国枝慎吾さん(車いすテニス)の107連勝は超えている。梶原自身、数字はあまり意識しないというが、「ずっと勝ち続けたい」という意欲は強い。しかももっと強くなりながら、その道を歩んでいけるという自信もある。
「僕のバドミントンは、まだまだ伸びしろがたっぷりだと思う。もっと強くなって見ている方を魅了できるバドミントンをしたい。まだ頭を100%使えている訳ではないですし、ショットの精度や種類もまだ少ない。もっと完成に近づけられるように頑張りたい」
バドミントンとの出会いについて聞かれると、「今となっては人生そのものだと思っています」と言った。
「車いすになって、野球の次に出会えたスポーツがバドミントン。人生を変えてくれたスポーツです。もっと突き詰めていきたいし、もっともっとパラバドミントンをいろんな人に知ってほしい」
ロサンゼルスで「3連覇」と「2冠」目指す
パリ大会のバドミントン会場には連日、朝8時30分から夜の22時、23時に及ぶ時間帯まで、本当に多くの観客が訪れ、8000席あるアリーナのスタンドの大半を埋めていた。梶原が繰り出す見事なコントロールショットに対しては、多くの観客が称賛の声や大きな拍手を送った。
「やっぱり、日本でもこういう歓声が聞けたらいいなと思う。もっともっとメジャーなスポーツにしていきたい」
梶原は選手みんなの思いを代弁するように言い、このように結んだ。
「2028年のロサンゼルスパラリンピックで、シングルスの3連覇と、今度はダブルスでも金メダルを獲って、次こそ2冠を達成したいです」
次のロサンゼルスパラリンピックでも、まだ26歳。成長曲線の途中にある3連覇の金字塔を、力強い視線で見つめていた。
edited by TEAM A
text by Yumiko Yanai
photo by Hiroyuki Nakamura