東京デフリンピックのメダルは「折り鶴」がモチーフ。パラリンピックからつながるアスリートの思い
ことし2025年の秋、日本で初めてデフリンピックが開かれる。デフリンピックは、聞こえない選手のための国際大会。4年に1度、夏季大会と冬季大会が行われており、東京2025デフリンピックは第1回大会(フランス・パリ)が実施されてから100周年の記念すべき大会だ。
障がいのあるなしに関わらず、ともにスポーツを楽しみ、互いの違いを認め、尊重し合う社会を実現させたい――デフリンピック開催を通じて目指すものは、パラリンピックと大きな違いはない。
今回は、11月15日~26日に開催される東京デフリンピックのメダルデザインに注目。2021年に開催された東京2020パラリンピックのメダルも合わせて振り返る。
全国の小中高生の投票で決定したメダル
2024年11月。東京デフリンピックでアスリートに授与されるメダルが、全国8万543人の小中高生などの投票により決定。1年前イベントでお披露目された。
コンセプトは「みんなで羽ばたく」。3つのデザイン案の中から、選手が活躍し、大きく羽ばたいていくことを願ったデザインが選ばれた。
「発表まですごく待ち遠しかった。とってもきれいなメダルなので、このメダルを獲得できるようにもっともっと頑張りたい」とは、デフ卓球の亀澤理穂。
デフ水泳の茨隆太郎は、「ほとんどの子どもたちがデフリンピックという言葉を知らなかったと思う。今回、デフリンピックについての学びを深めた上で、私たち選手のためにどんなデザインがいいか、話し合い、投票をしてくれた。(メダルに込められた)その思いを受けて頑張りたい」と気持ちを新たにしていた。
日本らしいデザイン
メダル表面には、折り鶴、そして縁起が良いとされている日本の伝統的な模様が描かれている。
裏面は、いくつもの線が交じり合うデザイン。「世界の人とのつながり」を表している。
リボンは、「藍鉄色(あいてついろ)」という緑色を含んだ濃い青色で、江戸時代の人が好んで使っていたとされる色が採用された。
デフ陸上の岡田海緒は、嬉しそうに話す。
「今までの大会のメダルは、大会のマークがそのままメダルデザインになっていることが多かった。今回はマークとは別に、折り鶴が描かれ、リボンも日本らしさを感じるデザインで本当にいいなと思っている」
子どもたちからは「折り鶴は手で作るもので、デフのコミュニケーションにとって重要な手を強調していると感じた」「日本の伝統的な文化と縁起の良い柄が合わさって、このメダルをもらった選手が嬉しくなると思う」などのコメントが寄せられた。
デフ陸上の山田真樹は、メダルデザイン決定の過程に、東京2020大会のレガシーを感じたと話す。
「東京2020大会のとき、全国各地からリサイクル金属を集めてメダルを作る過程が印象的だったが、今回も全国の皆さんから、(オンライン投票という形で)協力をいただいた。これは、東京2020大会のレガシーだと感じるし、とてもいいことだと思う。
デフリンピックは、聞こえない人たちのための大会だが、我々聞こえない人だけでは成り立たない。ボランティア、東京都にお住まいの皆さん、応援に来てくれる観客、家族がいて、はじめてデフリンピックが成り立つのではないか。
今回のメダル(の決定方法)は、全国の小中高生とのつながりが感じられるので、素晴らしいと感じた。生涯忘れることのできないメダルになると思います」
東京デフリンピックのメダルのモチーフは「折り鶴」だが、東京パラリンピックのメダルデザインは「扇」だった。
「人々の心を束ね、世界に新たな風を吹き込む」という願いが込められた。メダル表面には「Tokyo 2020」の文字が点字で表記され、側面を触ると、金・銀・銅メダルの違いがわかるように、金メダルには1つ、銀メダルには2つ、銅メダルには3つの丸いくぼみ加工が施されていた。視覚障がい者にもメダルの色がわかるようにする、パラリンピックならではの工夫は当時、話題になった。
来るデフリンピックは、スタート音や審判の笛が聞こえない状況を、スタートランプや旗などの視覚的な情報で補うなど様々な工夫のもとで競技が進行する。
聞こえない選手のための運営の工夫は、大会後の環境整備に活かされるのか。輝くメダルの行方とともに注目したい。
text by Asuka Senaga
photo by 提供写真