PTAのイベントに「パラスポーツ」がぴったり⁈ 親子で一緒に楽しみ学ぶ、その面白さに迫る!
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子どもたちに楽しく学びの機会を設けようとPTAで開催するイベント。それに「パラスポーツ」を選んだのが長崎県の大村市立三城小学校です。会場に集まったさまざまな年齢の子どもたちと親御さんは、楽しみながらも新鮮な驚きに満ちた表情を浮かべていました。子どもも親も思い出に残る場をパラスポーツでつくりあげたイベントの様子に迫ります!
親子で一緒に、パラスポーツを楽しみたい!
2024年11月、長崎県大村市の三城小学校でPTAのイベント「80周年だョ!親子でパラスポ体験」が開催され、同校および近隣の小中学校、幼稚園などの児童、生徒、園児とその親御さんら約50名が参加しました。
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このイベントは三城小学校の創立80周年を記念して実施されたPTA研修事業。2024年5月の同校の運動会の種目のひとつとして、学校の運動会にインクルーシブな種目を導入する「パラサポ!インクルーシブ運動会」の車いすリレーを実施したことをきっかけに、またパラスポーツに触れる機会をつくりたい!と、藤本祥人PTA会長が企画したものです。
「まずは何事も楽しむことを伝えたい。そして親子で何かを一緒に体験することが非常に大事。その体験を通して親子で笑顔になる、楽しかったことを家庭で話す。パラスポーツがそうしたつながりのきっかけになればと思い企画しました」(藤本さん)
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そんな藤本さんの声を受けて企画された今回のイベントは2部構成で、いずれも日本財団パラスポーツサポートセンター(パラサポ)のプログラムを活用。
まずは「あすチャレ!メッセンジャー」でパラアスリートからの講演を聞き、その後「あすチャレ!運動会」でパラスポーツ種目によるチームに分かれて行う運動会を実施しました。
「何事も楽しむ力」パラアスリートのメッセージ
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最初のプログラムは、パラアスリートで「あすチャレ!メッセンジャー」の講師でもある山本恵理選手による講演です。
この日のテーマは、『何事も楽しむ力』。山本選手は、まず参加した子どもたちや親御さん全員に「楽しいなと思っていること」「楽しくないなと思っていること」をできるだけ多く紙に書いてもらったうえで、『何事も楽しむ力』を大きくする3つのヒントを伝えました。
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その3つとは、
「感じ方を変えてみる」
「工夫してみる」
「自分にしかできないことをやってみる」
生まれた時から障がいがあったという山本選手。
「嫌だと思ったことはないです。だって、これが普通だから。不便だけど不幸だと感じたことはないんですよ」
感じ方や見方を変え、工夫し、自分にしかできないことをやることで山本選手は「どんなことでもナチュラルに楽しんできました」と話しました。そうして何事も楽しみながら生きてきた自身の半生を振り返りながら、「楽しむ力があればたくさんの人と大きなものを作り上げることができます。今回の3つのヒントのどれか1つでも取り組んでいただいて、紙に書いた『楽しくなかったこと』をどうすれば楽しくできるか、ぜひ考えてみてください」と、参加した皆さんに向けて“宿題”を出しました。
パラアスリートのお話から、「障がい」について考えるだけでなく、毎日を過ごす心持ちがちょっと変わるきっかけを得られたのではないでしょうか。
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「車いすでイヤだなと思ったことがないというのがすごいと思ったし、強く生きている人もいるんだなって思いました。山本さんのお話を聞いて、運動会のかけっことか持久走とか、これから頑張ってみようと思いました」(車いすユーザーのお姉さんがいる女の子)
「上の娘が車いすユーザーなのですが、その娘が生まれた時に第一声で言われたのが『ちょっとかわいそう』。でも、この子は(かわいそうではなくて)これがスタンダードなんだよと家族や親族にも言ってきましたし、同じことを山本さんがおっしゃったのを考えると嬉しいなと思いました」(お父さん)
「できる・できないじゃなくて、どうしたらできるようになるかというのは上の娘にずっと言ってきましたが、いろんな経験をされた山本さんが実際に『その力が大事だよ』という話をされたので余計に勇気づけられました。いろんなことにチャレンジしていけるように下の子にも言っていきたいし、みんなで楽しむためにはどうしたらいいかと考える力をつけていけるように、これからも関わっていきたいなと改めて思いました」(お母さん)
声を出さずにどうやって?アイスブレイク
講演に続いて、「あすチャレ!運動会」がスタート!
山本選手が、今度はナビゲーターとして運動会を盛り上げます。
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まずは参加者同士の仲をより深めるための「アイスブレイク」の時間です。
山本選手から出されたお題は、うどん・そば・スパゲッティ・ラーメンの4つから食べたい麺類を思い浮かべ、声を出さずに同じ麺類を思い浮かべた仲間を集めてグループを作ること。制限時間は1分! 声を出さずに、どうやってグループをつくるのでしょうか。
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制限時間1分と短い中、大人も子どももジェスチャー、口パク、麺類の文字数、さらには来ている服の色を指して連想してもらうなど、それぞれ工夫しながらグループを作っていきました。
さすがに4つのグループぴったりに分かれることはできませんでしたが、それぞれ同じ麺類を思い浮かべた人同士でグループを作ることに成功し、参加者の皆さんは笑顔。初めて会う人も多い中、すっかり打ち解けた雰囲気になりました。
「声を出せないと、皆さんが今やっていたように色々と工夫しますよね。それが先ほど(講演でも)お話しした工夫する力です」と山本さん。そして「これでまたコミュニケーションを取れるツールが増えると思います」と、うどん・そば・スパゲッティ・ラーメンを表す4つの日本語の手話を参加者に伝授。「ラーメンの手話ってこんなふうにするんだ!」と皆さん驚きながら真似していました。
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ナイスショットにみんなで拍手!ボッチャ
参加者皆さんの心も体もいい具合に温まってきたところで、いよいよ競技スタートです!
レッド、ブルー、オレンジ、グリーンの4チームに分かれ、第1競技としてチャレンジしたのは、パラリンピックの正式競技であるボッチャ。最初に投球した白いジャックボールに向かって、対戦する2チームがそれぞれ赤と青のボールを投げたり転がして、ジャックボールに一番近づけたボールのチームに得点が入ります。
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年齢を問わず、気軽に取り組めるボッチャ。しかし、ジャックボールに近づけるのは一筋縄ではいかず、相手のコースを塞いだりといった戦術もまた面白いところ。
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その奥深さと面白さを実際に体験したからでしょう、ジャックボールにぴったりくっつけるナイスショットが出ると、味方チームはもちろん、対戦チーム、試合を見守るギャラリーからも一斉に大きな拍手と歓声。1競技目から大盛り上がりとなりました。
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「ボッチャが楽しかったです。ボールは軽いと思っていたけど重くてコントロールするのが難しかった。近くに投げようと思っても遠くに行っちゃったり。難しかったけど面白かったです」(男の子)
「パラスポーツってどうなんだろうと様子を見て参加しなかった親子もまだたくさんいると思うんです。実際にやってみて『楽しかったよ!』ということを周りに伝えて、みんなでまたやりたいなと思いました」(お母さん)
みんなでパスをつなぐ!車いすポートボール
続いての競技は車いすポートボール。車いすバスケットボールとほぼ同じルールで、バスケットゴールではなくコートの両サイドに立っているゴールマンに向けてシュートし、ゴールマンがボールをキャッチすれば得点となります。今回は特別に、パラサポから2024年9月に大村市に寄贈されたスポーツ・アクティビティ用の車いす「パラサポ!ミライ」を使用しました。
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大人・子どもの混合チーム同士での対戦! 体格的に大人が有利になるかと思いきや、車いすの操作にすぐに慣れた子どもたちがスイスイとコートを動きまわり、活躍する場面も。そしてどのチームも子どもから大人、大人から子どもへと一緒になって声を掛け合ってパスをつなぎ、得点を決めていました。シュートが決まると大盛り上がりです。
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「車いすに乗ったのも初めてで、子どもの競技は見ていたけどあんなに操作が難しいとは思わなかったです。だから車いすポートボールで思い通りに操れたのが一番楽しかったですね。またチラシとかで同じようなイベントを見つけたら絶対に参加したいです!」(お母さん)
「私も車いすポートボールが一番楽しかった。ボールを取られたときもあったけど、ちゃんとパスできたのが楽しかったです。絶対にまたやりたいです」(女の子)
真剣勝負!全力応援!車いすリレー
最後の競技は車いすリレーです。実は「パラサポ!ミライ」は2種類の形に変形させることができる車いす。先ほどのバスケットボールポジションから車いすリレーポジションへ、タイヤの角度やバンパーの位置などをパパっと変形。参加者の皆さんからは驚きの声が上がりました。
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いよいよスタート。車いすリレーはコーンの間の直線を往復するシャトル形式で実施しました。最後の競技ということもあり、各チーム気合充分です!
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走者が交代する際には車いすの乗り降り、向きを変えるなど前走者と次走者が協力しなければ大きくタイムをロスしてしまいます。安全に、かつスムーズな交代ができるよう協力するのがチーム力の見せどころです。
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車いすを速くこぐだけでなく、チームの大人と子ども全員が声を掛け合い、協力して「バトン=車いす」をつないでいくことで、この日一番の白熱した大接戦と応援の中でのフィナーレとなりました。
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「リレーが一番楽しかった。みんなで競い合うのが楽しかったです。今日は自分の楽しくないことを楽しいことに工夫することが勉強になりました」(女の子)
「娘が(2024年5月の)運動会で(車いすリレーを)やっているのは見ていたのですが、今日初めて車いすに乗ってみて、すごく貴重な体験になりました。小さい子から大人まで乗れますし、競技によって車いすの形を変えられるのがすごいですよね。また、こういうイベントを大村市で普及して、毎年運動会でしてもらえたらなと思いました」(お母さん)
親子の学びにぴったりなパラスポーツ
全てのプログラムを終えて何組かの親子に感想をお伺いしたところ、どの方も「楽しかった」「またやりたい」と笑顔で話していました。その理由として親御さんからは「みんなで楽しむことができたから」「誰でも同じレベルで競技ができるからかな」「身長とか関係なく小さい子どもでも楽しんでいた」との声が。
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親子で同じ目線で学ぶ機会になった今回のイベント。障がいの有無だけでなく、年齢・性別なども関係なく誰もが楽しめるのがパラスポーツの大きな魅力であり可能性。だからこそ、親と子どもが同じ目線で一緒に夢中になれたことで、親子同士の絆がさらに深まったのではないでしょうか。
また、運動会だけではありません。山本さんの『何事も楽しむ力』の講演に感銘、刺激を受けた親子も多く見られました。「山本さんのメッセージがすごく良かったですし、今回のイベントを通して思ったのは、障がいのある人だけじゃなくて困っている人に手助けできるチャンスがちょっとでもあれば積極的にやることが大事だということ。少しでも周りの人たち同士で支える努力ができればと思いました」と、あるお父さん。
また、家族に車いすユーザーがいる親御さんは「今回の体験を通して、みんなが車いすに抵抗がなくなってきたら嬉しいですね。日常生活の中で車いすユーザーや障がいのある方たちと普通に接する環境ができたらいいなと思います」と話すなど、障がいや共生社会について、子どもたちだけでなく地域の皆さんが一緒に考えるきっかけになることを期待する声も聞かれました。
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笑顔で帰っていく参加者の方々を見送って、PTA会長の藤本さんがこう語りました。
「多様性、共生社会などいろんな言葉がありますが、それを体験できる場を作り出していくべきだと思います。今回のように親子で笑顔になれる経験が他の小・中・高校にもっと広まってほしいですね」
親子で一緒に楽しみ学べるスポーツ、レクリエーションをと考えているPTAの皆さん、今回のようにパラスポーツを活用してみてはいかがでしょうか。
text by Atsuhiro Morinaga(Adventurous)
photo by Yuito Kokubu
あすチャレ!メッセンジャー
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あすチャレ!運動会
https://www.parasapo.tokyo/asuchalle/undokai/
パラサポ!インクルーシブ運動会
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