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車いすカーリング
【Road to 2026】16年ぶりのパラリンピック出場をかけた大勝負に挑む!車いすカーリング“チーム中島”

1年後に迫ったミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会で新種目として初お目見えするのが車いすカーリングのミックスダブルス(男女混合2人制)だ。ミラノ・コルティナ最終予選の位置づけとなる世界選手権に、日本から“チーム中島”が出場する。ペアを組む小川亜希、中島洋治が抱く大舞台への秘めた思いや決戦を前にした心境を聞いた。

いざ世界選手権へ!
――3月11日から「世界車いすミックスダブルスカーリング選手権大会 2025」が始まります。開催地は、カーリング発祥の地、スコットランドです。小川亜希(以下、小川): 現在、ミックスダブルスに先駆けて4人制の世界選手権が行われています。配信映像を見ていると、新しくてきれいな会場ですね。試合が楽しみです。
中島洋治(以下、中島): 20年前に出場した初めての世界大会がスコットランド(グラスゴー)でした。世界のチームから3勝して自信をつけた思い出の地。今回(スティーブンストン)と会場は違うけれど、スコットランドにはいいイメージしかありません。

小川: 日本からの移動時間が長いことは心配ですよ(笑)。
中島: 4人制の選手の皆さんがトイレやシャワーの様子、「部屋に冷蔵庫がない」などの情報をくださるので、ありがたいですね。足りないものは日本から持っていけますし。

小川: 私も会場の温度を聞き、持っていく防寒着をどうするか荷造りの参考にしました。
――ミラノ・コルティナ出場権がかかる大事な大会です。現在、世界ランキング(2023年~2025年のポイントランキング)9位の日本代表は、開催国であるイタリアを除き上位7位に入ることが条件になります。中島: 強いチームばかりで全く気が抜けません。予選ラウンドでは、昨年2度負けている中国に勝ちたい。アメリカも強豪です。絶対に上位で決勝トーナメントに進出しなければならないので、どの試合も落とせません。
小川: 自分たちらしく1試合1試合積み重ねていくだけです。

中島: ミックスダブルスはミラノ・コルティナからの新種目なので、どの国も力を入れています。そんななかで自分たちのプレーに集中し、上位に食い込みたいと思います。
男女1人ずつ計5投の勝負
――プレーしていてどんな点が4人制と違うと感じていますか。小川: 1エンドで投げる回数が5投(4人制は8投)と少なく、一投一投が大事になる。ストップウォッチで計った秒数(投げたストーンの速度)を共有し、たとえば1本目でストーンの距離が少し短かったら、調整したうえで次はいいショットを決めるというやりとりは4人制と変わりません。でも、ミックスダブルスは基本的に投げる人とハウスで指示をするパートナーの間に距離があり、投げるとき味方に相談できません。一投に重みがあるので、自分の力が大きく影響します。「やるしかない」という気持ちで投げています。

中島: 選手が2人しかいない分、失敗できない難しさはありますね。ミックスダブルスは、とても難しいと思います(編集注:車いすカーリングはスウィーピングが禁止。氷の状態を読む力とドローの精度がより勝敗に影響する)。でも、うまくいったときもうまくいかなかったときも全部チームで共有し、結果に関してはお互いが納得しているので、そういう点ではいいチームなのかなと思います。

中島: 4人制と比べて展開が速いです。プレーエリアに2つのストーンが配置された状態で始まり、ハウスの中にストーンがたくさん集まります。次の展開はどうなるのか、見ている人も一緒に作戦を考えながら楽しめるのではないでしょうか。
――お互いの強みを教えてください。中島: ラストロック(5投目)を投げる小川さんは、ハートが強いです。経験もありますし、ミックスダブルスのパートナーとして一番ですよ。

小川: そんな言葉、初めて聞きました! 私は、中島さんの指示通りに投げるだけです。投球の位置についたら覚悟は決まっています。パートナー、そして自分を信じて投げています!
中島: 自分は(味方のストーンを守るために置く)ガードストーンを置いたり、ガードストーンの裏にストーンを入れ込んだりする投球を磨いているので、ぜひ注目してもらいたいですね。
小川: 私は何も考えずに行動してしまうところがあるのですが、中島さんは慎重に物事を進めてくれます。約20年の経験がある中島さんは、アイスコンディションを読む判断が速いんです。だから、中島さんが投げるときは安心して見ていられます。ドローの安定性と調整力が“チーム中島”の強みです。

中島: あとはコーチに聞いてください(笑)
飯野明子コーチ: 2人の強みは、アイスを読む速さと調整力。2人のタイプは全然違いますが、それがいい方向に向かうことが多いかな。競技経験が長いので、崩れることはあっても崩れ落ちないところが2人のいいところ。国内の強化指定選考大会で予選3位から優勝するなど盛り返すこともできます。
昨年の世界選手権では競り勝つ経験もできましたが、(イタリアに敗れた)3位決定戦は焦りが出ていたように思います。チームで今までやってきたことを信じてがんばりましょうね!

小川: バンクーバーパラリンピックに出場したとき、周りの人たちがすごく喜んでくれたし、今でも応援してくれる。それが、カーリングを続ける原動力になっています。世界選手権で勝利を重ね、ずっと目標にしてきたパラリンピック出場を掴みたいと思います。
中島: 前回のパラリンピックから時間が空いてしまったけれど、今、新しい種目でチャンスをもらえていることに感謝と喜びを感じています。気負わず、自分のプレーに集中し、必ずパラリンピック切符を掴み取ります。

text by Asuka Senaga
photo by X-1