世界初!? パラスポーツとコラボした「謎解き」に親子が夢中!

世界初!? パラスポーツとコラボした「謎解き」に親子が夢中!
2025.03.31.MON 公開

パラスポーツと謎解きのコラボレーションは、おそらく世界初!? パラアスリートの意見を取り入れてつくられた、バリアフリーがいっぱいのパラスポーツ専用体育館・日本財団パラアリーナを会場に、3月8日(土)と9日(日)の2日間、『パラスポーツ×謎解き~あすチャレ!ヒラメキアスリートを目指せ~』が開催されました。

2日間でたくさんの親子が参加し、車いすユーザーや視覚障がいのある子どもたちも一緒になってチャレンジ。パラスポーツの要素を取り入れた謎解きイベントはどんなものだったのでしょうか?

謎を解き、ヒラメキアスリートを目指せ!

今回の謎解きのコンセプトは、謎に直面し、自分で試行錯誤する中で、周囲の助け(アスリートからのヒント)を得ながら、アスリートが課題を乗り越え成長していく過程を追体験する、というもの。パラスポーツの要素を取り入れたさまざまな「謎」が日本財団パラアリーナに仕掛けられました。

パラリンピックのメダリストに国内外で活躍する現役選手など、さまざまな競技のパラアスリートが集合!

オープニングでは、たくさんのパラアスリートたちが登場! 日本財団パラスポーツサポートセンター(パラサポ)の教育・研修プログラム「あすチャレ!」の講師を務めるアスリートが、謎解きのヒントを出したり、案内役を務めます。駆けつけた選手たちに、参加者から大きな拍手が送られました。

パラ・パワーリフティングの山本恵理選手が謎解きの実行委員長を務めます

パラアスリートの山本恵理選手が開会の挨拶。「皆さんには今日、謎解きを通してアスリートになってもらいます。その中で様々な困難が待ち受けていると思いますが、その時には『オモイ』を『チカラ』に変えて頑張ってください!」とエールが送られ、いよいよ謎解きイベントがスタートです!

パラスポーツの体験も!解き応え抜群の謎解き

謎解きは2つのステージに分かれており、まず「ステージ1」は体育館を舞台に3つのエリアでパラスポーツ×謎解きが展開。各エリアごとに1枚、謎が記されたシートが参加者に渡されます。パラスポーツやその競技用具などを組み込んだお題とヒントがアリーナ内に散りばめられており、実際に体験したり、アスリートからヒントをもらいながら、シートに書かれた謎を解き明かしていきます。

謎解きシートの一部。パズルのような謎に、パラスポーツが仕掛けとして組み込まれています

ボッチャではまず親子で競技を体験した後、アスリートに質問しながらジャックボールに貼ってあるヒントを探ります。また、車いすバスケットボールパラ卓球でもボールなどにヒントが貼ってあり、それぞれアスリートとパスやサーブを交換しながらヒントを集めていきました。

ボッチャを体験した後、テーブルに置かれたジャックボール(白いボール)の裏を見ると、何やら文字が書かれています
車いすバスケットボールの競技用車いすに乗って、パラアスリートとボールの投げ合い! こちらも何かボールに書いてあるぞ……
車いすに乗り、パラ卓球の選手からサーブされたボールをキャッチ! こちらもボールに何かイラストが描いてあったようです

ただ謎を解くだけではなく、車いす、ボール、ラケットなどの用具に触れながら実際に競技を体験。さらにアスリートたちとも交流しながら問題を解いていくという新感覚の謎解きに、大人も子どももすぐに夢中に。「ボッチャでママに勝つことができて嬉しかった!」「車いすが楽しい!」と子どもたちが話してくれたのに加え、親御さんも「子どもがアスリートや車いすユーザー、障がいのある方と直接交流を持てたので、すごく良い経験になったと思います」と笑顔で語りました。

視覚障がいのある中澤隆選手(パラトライアスロン)を声で誘導し、離れたところにあるパネルに書かれたヒントを得るエリアも
いくつかのパラスポーツの競技のボールが混ざっている。どの競技のボールが何個あるだろう? 個数を数えて、その数字とシートに書かれた文字を照らし合わせてみると……
土曜日には、視覚障がいのある男の子も参加しました photo by parasapo

一方、本題の「謎」そのものも一筋縄ではいかない本格的な難易度です。各エリアで集めたキーワードをもとに「ステージ1」の答えを導くのですが、“ヒラメキ”がないとなかなか答えにたどり着きません。むしろ大人の方が悪戦苦闘する中、パッとその瞬間がやってくるのはやっぱり子どもたち。「やった!」「分かった!」と柔らかい発想とヒラメキで次々とクリアしていきました。

謎を解きながらバリアフリーに触れる

さあ、次は「ステージ2」です。はじめに向かう先はロッカールーム。ここではまず車いすに乗り、誰でも使えるバリアフリーのロッカーを体験します。そして「ステージ1」で出た答えの数字4桁が合っていればロッカーの鍵が開き、「ステージ2」のお題が書かれたシートと地図をゲット! まさに宝の地図を手に入れるような仕掛けに親子から「わあ!」という驚きと喜びの歓声が上がりました。

普通のロッカーでも、位置を高くして、下にスペースを空けていれば車いすに乗ったまま使える! 楽しむ中でも色々な発見があります

しかし、「ステージ2」はここからが本番です。地図を頼りにエントランス、トレーニングルーム、会議室をめぐり、バリアフリーの工夫がいっぱいの施設を体験して学びながら、お題にチャレンジ。
会議室ではアイマスクをして謎解きにチャレンジ! 視覚を完全に遮断してプレーするゴールボールでは、コート内のラインテープの下に糸が入っていて、選手が触って自分がどこにいるのかがわかるようになっています。今回もそれと同じように、手で地面に貼られたテープの下にある糸を触って、答えを探します。

タコ糸が貼られているのはどこだろう? 場所を覚えてシートに書き込むと……

また、トレーニングルームではヒントが重さ18kgのダンベルの下に隠れて見えません。子どもたちが持ち上げようとするもビクとも動かず……。そんな時に助けてくれるのがパラ・パワーリフティングの選手たち。「頑張れー!」という子どもたちの大きな声援に後押しされた選手がダンベルを持ち上げ、その間にヒントを読む――そうした子どもたちとアスリートの連係プレーで一緒になって謎を解いていきました。

ダンベルの下にはタヌキのイラストと謎の言葉が。「タヌキ」ということは……?

「ステージ2」の各エリアで出された4つの謎をクリアすると、いよいよ最後の問題です。4つの謎のそれぞれの答えを組み合わせると、ある一つの言葉になるのですが、一見するとそれだけでは意味が分からない言葉です。「これが答え?」と親子の間で浮かぶハテナマーク。ゴールを目前にした最後の最後で、この日一番の大きな困難が待ち受けていました。
しかし、ここで思い出すのは「困った時には『オモイ』を『チカラ』に変えて」と、開会式で山本選手が送ったエール。実はこれが最大のヒントだったのです!

親子で一緒に考えて……ひらめいた!

そして、最後の謎を解き明かし、その答えで示された場所へと飛び込んだ親子たちを待っていたのは、大勢のパラアスリートたち! 祝福の拍手・声と合わせて謎解きクリアの認定書&バッジが贈呈され、最後は一緒に記念撮影。もちろん親子は達成感でいっぱい、アスリートも一緒に大盛り上がりのフィニッシュとなりました。

ヒラメキアスリート認定! パラアスリートの皆さんが笑顔で迎えました

障がいにあるなし関わらず楽しめたパラスポーツ×謎解き

謎解きを通してパラスポーツへの興味を大いに高めた親子も!

パラスポーツ×謎解きという初の試み。参加者にとってはどんな経験になったのでしょうか。

イベント後、小学4年生の男の子と一緒に参加したお母さんの親子にお話を伺いました。ちょうど授業でアンプティサッカー、ブラインドサッカーについて学んで調べたりしたことが印象に残っていて、今回「パラスポーツ×謎解き」ということで「ぜひ行ってみたい!」と参加したのだそう。

「スポーツというと、激しいのが当たり前でそれが楽しいと思っていました。でも、今日ボッチャなどをやってみて、大人も子どもも、障がいの有無に関わらず同じ目線で楽しむことができました。こんなに夢中になるとは思わなかったです(笑)。パラスポーツは『見るもの』から『自分もやってみるもの』という印象に変わりました」(お母さん)

「もっとパラスポーツをやってみたいと思いました。すごく楽しくて、ボッチャをもっとやってみたい」(男の子)

謎解きを楽しみながら、パラスポーツに対する新しい発見や気づきがあったようです。

障がいのある子でも参加できた今回の謎解き。車いすユーザーの女の子とそのお母さんは「行ってみたかった『謎解き』に初めて参加できて嬉しかった」

また、今回は「バリアフリー」な謎解き、というのもポイントでした。2日間のイベントの中には、障がいのある子の姿も。車いすユーザーの小学2年生の女の子と参加したお母さんは笑顔でこう語ってくださいました。

「バリアフリーな謎解きということで娘と一緒に参加したのですが、とても楽しかったです。娘が初めてバスケ車に乗ったり、卓球を体験したのですが、すごく楽しそうな表情を見ることができて良かったです。娘には今後、ボッチャ、ハンドサッカーなどのスポーツに触れさせたいなと考えていた中での今回のイベントで、とても勉強になりました。一つのことに絞らず、色々なことをさせてみたいです」

また、この日出会ったアスリートの言葉からも新たな気づきがあった様子。「今日、アスリートの方たちから努力していくこと、継続していくことの大切さ、そこからヒラメキが生まれるというお話を聞いて、そうだなと思いました。私も今後、意識していきたいです」と、お子さんと歩んでいくこれからの生活につながるヒントを得られたようです。

「かけ合わせ」で広がる可能性

参加者の方々に大いに楽しんでいただけたことは、「仕掛け人」の心にも残ったようです。

今回のイベントには、運営スタッフの一員として「あすチャレ!」プログラムの協賛企業からボランティアの方も参加。「謎解きとパラスポーツの体験を織り交ぜるコンセプトが斬新でした」と、やはり今回は全く新しい経験だったとのこと。

パラアスリートと一緒に、親子が楽しむ「仕掛け人」として活躍したボランティアの方々(写真奥、水色のビブスの2人)

親子の謎解き、パラスポーツ体験をサポートしていく中で「人が楽しむ姿を見る、その楽しさに気づかせてもらいました」「スポーツを通して車いすの仕組みなどを詳しく知ることができたので、とてもいい経験になりました」と、ボランティアの方々にもプラスの体験となりました。そして、「自分でもパラスポーツをプレーしたくなりました」「次もぜひやりたい。今回のように1つのイベントを通して色々な人に気づきを提供できればすごく嬉しいです」と、第2回の開催を今からもう心待ちにしている様子でした。

そして実行委員長を務めた山本恵理選手は、今回の謎解きをこう振り返ります。

「今回、謎解きとパラスポーツをかけ合わせることで、謎解きが好きな方がパラスポーツのことに目を向けてくれたこと、謎を解く中でパラスポーツやアクセシビリティ、ユニバーサルデザインについて気づいていただけたのがすごくよかったと思います。

今回バリアフリーな謎解きをやろうと思ったのは、私自身の経験も背景にあります。謎解きに行きたいと思っても、車いすユーザーが来ることがそもそも想定されておらず、『謎を解く人』の中に障がいのある人が入っていないことにもやもやしたものを感じていたんです。一度そういった場をつくってみれば、『こうやって簡単にできるんだ』と感じてもらえるのでは、という挑戦でもありました。謎解きを一緒に制作した会社の方にもとても勉強になったとお言葉をいただいて、本当にやってみてよかったです。

パラスポーツと何かをかけ合わせることで、パラスポーツにおいても来ていただいた方に新しい楽しみ方や気づきをもたらせるし、かけ合わせる『何か』をどんな人も楽しめるものにしていける可能性を、今回改めて感じました。謎解きはもちろん、脱出ゲームであったり、『パラスポーツとのかけ合わせ』をこれからも考えていきたいですね」

イベントの最後には、パラアスリートたちが自身の人生の中で得たそれぞれの「ヒラメキ」を伝えるトークも。参加者からの質問タイムも大いに盛り上がりました

さまざまな気づきや想いを関わる人の心に残した今回の謎解き。「パラスポーツ」と「謎解き」のかけ算には、大きな可能性が秘められているようです。

text by Atsuhiro Morinaga(Adventurous)
photo by Yuito Kokubu

世界初!? パラスポーツとコラボした「謎解き」に親子が夢中!

『世界初!? パラスポーツとコラボした「謎解き」に親子が夢中!』