もうすぐ10万人!? 日本全国で毎日のように「あすチャレ!School」開催中
日本財団パラリンピックサポートセンター(以下、パラサポ)が、全国の小・中・高校生を対象に行っているパラスポーツの体験型出前授業「あすチャレ!School」。
パラリンピアンが講師を務め、①パラスポーツのデモンストレーション ②パラスポーツ体験 ③講話 という3つのプログラムを通じて、「障がいとはなにか?」「人間の可能性」「チャレンジすることの素晴らしさ」等を伝え、子どもたちに新たな気づきと学びの機会を提供している。
日本全国で9万人以上の生徒が参加!
初年度の2016年は116校(18,575名)で実施し、2017年度からは日本航空株式会社(以下、JAL)協賛のもと、車いすの保管・輸送から講師の移動のサポートまで協力を頂き、全国展開が実現。北は北海道から南は沖縄まで263校(42,741名)で実施した。 2018年度はさらに規模を拡大し、年間300校を目標に活動中。講師も4名に増え、体験できるパラスポーツは各講師にあわせて、車いすバスケットボール、ゴールボール、車いすリレーとなっている。
東京2020パラリンピックまで残り2年となった今年度は、全国の学校から応募が増えており、過去最高規模となっているが、その中でも「日本最南端」での開催記録を更新したのが、沖縄県・石垣島だ。
あすチャレ!School in 石垣島
昨年、石垣島の南端に位置する石垣市立石垣中学校で1年生180名を対象に「あすチャレ!School」が行われた。沖縄での開催とあって、JALグループの日本トランスオーシャン航空(JTA)丸川 潔社長も駆けつけ、JALの担当者と共に、生徒への挨拶と自己紹介が行われ、和やかな雰囲気の中プログラムがスタートした。
元日本代表キャプテンのデモンストレーションで大興奮!
この日の講師は、パラサポのあすチャレ!プロジェクトディレクターでシドニーパラリンピック男子車いすバスケットボール日本代表キャプテン・根木慎志。巧みなチェアワークで、体育館を華麗に、そしてアグレッシブに駆けまわり、生徒の興味を一気に引き付ける。さらに会場をドリブルしながら1周し、軽妙なトークで場を盛り上げる。続いてレイアップシュートを披露し、3ポイントシュートでは生徒の声援を呼びかけ、シュートが決まると同時に大歓声が沸き起こった。はじめは生徒も、根木がどんな人なのか、車いすバスケがどんなものなのか想像がついてない様子だったが、生徒の目がパラリンピアンを見る尊敬のまなざしに変わっていくのが印象的だった。
車いすバスケットボールの体験&応援が生む一体感
続いて、パラスポーツの体験・車いすバスケットボールでは、代表生徒20人が4チームに分かれ、男女それぞれミニゲームを行った。はじめは恐る恐る車いすをプレーする生徒たちも、徐々に操作やボールまわしになれてくると、夢中で、無心でプレーする姿が目立つように。しかし、中学生といえど車いすからのシュートは、なかなかボールがゴールに届かず苦戦していたが、観戦する生徒たちの応援もヒートアップし、歓声と悲鳴が入り乱れる中、体育館のボルテージは最高潮に。バスケットボール部の生徒は徐々にコツを掴んで、アドバンテージを生かしたプレーも披露するが、車いす操作は初心者だからこそ、誰もが楽しめるパラスポーツの魅力を、プレーする生徒も応援する生徒も感じ取っている様子だった。
また、サプライズで行われた3試合目・先生同士のミニゲームがこの日一番の盛り上がりを見せる。というのも、先生たちも生徒と同じように、まったくの初心者として車いすバスケットボールを体験するため、普段はなかなか見られない? 先生の珍プレーや興奮した表情に、生徒たちの応援と歓声に爆笑も混ざり、みんなが声を出して笑顔にあふれる会場には一体感が生まれていた。
芽生えた‟気づき“で講話は真剣ムード
パラスポーツの体験後、自分を囲むように生徒たちを呼び集め、自身の体験から‟チャレンジすることの素晴らしさ“を語りかける講師の根木。例えば「体育館の中で競技用車いすがあれば思いっきり競技ができる自分も、一歩外に出て、そこに段差があると、途端にそれが障がいになってしまう。でも、その障がいはスロープやエレベーターがあったり、友達や仲間が介助することによって無くなるもの。障がいとは“みんなが生きていく中で困ること“だと思うけど、まわりの友達やサポートする人たちがいると‟障がいがなくなる”」という話から、障がいとはなにか? について考えるきっかけを生徒たちに提供していた。
パラスポーツのデモンストレーションから体験・応援を経て、すでに生徒たちの中に‟気づき“が芽生えているせいか、根木講師の話を聞く表情は真剣だった。
パラスポーツで「心が動く、明日を変える」
車いすバスケットボールを体験した生徒からは「車いすの操作が難しかったけど、楽しかった。もっとやりたい!」という声が多く出ていた。先生からは「みんなの応援が力になった」「バスケットボールより車いすバスケの方が楽しい!」「自分が先生ということを忘れて楽しんでいました!」という感想まで飛び出した。
どんな人にもいろんな可能性があり、工夫すれば出来ることは増えていく。子どもたちの目がどんどん輝き、夢中になっていくパラスポーツは、共生社会を実現する可能性を秘めている。誰もが違いを認め、素敵に輝ける社会を目指す取り組みとして「あすチャレ!School」は、これからも活動を続けていきます。
text&photo by Parasapo