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パラスポーツ最強チームが決まる頂上決戦「あすチャレ!運動会 日本一決定戦!」
3月17日、東京・お台場の日本財団パラアリーナは、全国から集まった139名の選手の熱気に包まれた。集結したのは、昨年から行われていた「平成30年度スポーツ庁委託事業 全国横断パラスポーツ運動会」で全国7つのブロック大会を勝ち抜いてきたチーム。「あすチャレ!運動会 日本一決定戦!」(協賛:株式会社JTB、後援:スポーツ庁)として開催される今大会の優勝チームが文字通りの日本一となるとあって激戦が繰り広げられた!
<あすチャレ!運動会 日本一決定戦! 出場チーム>
北海道ブロック代表:一般財団法人 さっぽろ健康スポーツ財団、東北ブロック代表:東北福祉大学、関東ブロック代表:JXTGエネルギー株式会社、中部ブロック代表:株式会社デンソー、近畿ブロック代表:大阪体育大学、中四国ブロック代表:マツダ株式会社、九州ブロック代表:久留米大学、スペシャルチーム:チャレンジャーズ
大会の盛り上がりに大きな役割を果たしたのが「チャレンジャーズ」として参戦したスペシャルチームの存在。シドニーパラリンピック男子車いすバスケットボール日本代表のキャプテンを務めた根木慎志さんをキャプテンに、バレーボールの全日本女子エースアタッカーとして名を馳せた大林素子さん、パラリンピックの水泳で計21個のメダルを獲得し日本人初のパラリンピック殿堂入りを果たした河合純一さんなど「日本財団HEROsアンバサダー」のメンバーを中心に結成されたチームだ。
ほかにも、ソフトボールでオリンピック3大会に出場し、現在は車椅子ソフトボールの普及に尽力する髙山樹里さんや、現役で活躍する車いすバスケットボールの森谷幸生選手など多くのアスリートが顔を揃え「優勝候補ではないか!?」とささやかれていた。
シッティングバレーボールで大会が開幕
最初の競技は座った状態で行なうシッティングバレーボール。この競技をすでに何度か経験しているという元プロバレーボーラーの大林さんはデモンストレーションでも鋭角なスパイクを披露し、活躍に期待がかかるが、なんと初戦で対戦した九州ブロック代表の「久留米大学チーム」は丁寧なボールつなぎで対抗し、「チャレンジャーズチーム」を破ってしまう。その後も、大林さんは要所要所で鋭いスパイクを決めるものの、チームは未勝利のまま競技を終えることに。今大会に集まった地区代表チームのレベルの高さを感じさせる結果だった。
「バレーボールとシッティングバレーボールは全く別の競技。座った状態でプレーする分、身長の高さやジャンプ力などの差がなく、コンディションの勝負になる点がシッティングバレーボールの面白さだと思います」と試合後に語った大林さん。「各地の大会にゲストとして行かせていただくことも多いのですが、小学生から高齢者まで3世代が同じコートでプレーしていることもあって、この競技の懐の広さを感じます。今日も、皆さん笑顔でプレーしていたのが印象的でした。でも、1勝もできないとは……」と悔しがりながらも笑顔で話してくれた。
この競技で全勝の活躍を見せ、得点でもトップに立ったのが北海道ブロック代表の「さっぽろ健康スポーツ財団チーム」。チーム代表の井川さんは「ブロック大会後、ボールに触って慣れるようにはしていましたが、コートがないので本格的な練習はできませんでした。全勝という結果はチームワークによるものだと思います」と笑顔で語る。今大会の参加チームのなかでも幅広い年齢層が顔を揃える同チームだが、確かに試合中はプレーヤーだけでなく応援のメンバーも含めて積極的に声を出しながら競技を楽しんでいた姿が印象的だった。
静けさの中で熱い戦いが展開されたゴールボール
続いての競技は目隠しをした状態で行われるゴールボールだ。ブロック大会では初めて経験する人がほとんどで、視界のない状態でボールを転がしたり、ボール内の鈴の音を頼りにディフェンスする動きに戸惑いを隠せないチームも少なくなかった。だが、今大会では全てのチームが一度は体験していることもあって、思い切りのいい投球や機敏な動きを見せるなどハイレベルな試合が展開された。
この競技を無敗で終えたのが関東ブロック代表の「JXTGエネルギーチーム」。「コートもボールもないので、この競技は全く練習できませんでしたが、動画を見たりしてイメージトレーニングをしてきたのが良かったのかもしれません」と語るのは同チームの中野さん。「さっぽろ健康スポーツ財団チーム」や「大阪体育大学チーム」など、強豪を相手に勝利を収めた活躍が目立った。
ハイレベルな攻防が見られたボッチャ
非常にハイレベルなゲームが展開され、見る者も手に汗握ったのがボッチャ。各ブロックの代表となったチームは、この競技で好成績を収めているところが多く、練習を積んできたチームも少なくないため、各コートで一球ごとに展開が変わるレベルの高い争いが繰り広げられた。
全勝チームのいない拮抗した展開のなか、無敗の成績を収めたのが「さっぽろ健康スポーツ財団チーム」。また、「大阪体育大学チーム」も2勝1敗の好成績で競技を終えた。先日のボッチャ東京カップ2019でも予選会を突破し本大会に出場しただけあり、チーム全員がコントロールの良い投球を見せていた。「練習は週に1回くらいしかできていませんが、姿勢の安定する膝立ちでの投球を採り入れたのが良かったのかもしれません」と語るのは同チームの江崎さん。「ボッチャと、このあとの車いす競技は得意なので、ここから巻き返します」と力強くコメントしてくれた。
スピード感あふれる好ゲームが続出
続いて行われたのは車いすポートボール。車いすの操作と、パスをつなぐポジショニングがポイントとなる競技だが、日本一決定戦の舞台だけあり、車いすの扱いは多くのチームが手慣れている。ブロック大会よりもさらにハイスピードなゲームが展開された。多くの人が目を奪われたのは「チャレンジャーズチーム」の現役の車いすバスケットボールプレーヤー森谷選手の華麗なプレー。1人だけ別次元のスピードでコートを駆け抜け、競技レベルの高さを見せつけた。
しかし、各ブロックの代表チームも負けてはいない。「久留米大学チーム」と「大阪体育大学チーム」は、森谷選手擁する「チャレンジャーズチーム」相手に引き分けに持ち込む好勝負を見せる。また、授業のなかでも車いすを使うことがあるという「東北福祉大学チーム」も素早い車いす操作で、これらのチームに対抗していた。「ブロック大会からかなり練習をしてきたのですが、全国から強豪チームが集まっているだけあって緊張感が違いますね。なかなか思い通りの動きができません」と語るのは東北福祉大学チームの小林さん。「でも、パラスポーツをこれだけ一生懸命やっている人たちが全国にいるのだということがわかって、とても楽しいです」と笑顔を見せていた。
一方、ここでも全勝の活躍を見せたのは上記のチームと別リーグとなっていた「さっぽろ健康スポーツ財団チーム」。総得点でポイント差を広げ、優勝に大手をかけた。
ハイスピードなレース展開で優勝チームが確定
この日、最後の競技となったのが車いすをバトン代わりにつないでいく車いすリレー。この運動会特有の種目だが、スピードだけでなく車いすの受け渡しの際のチームワークも問われ、各ブロック大会でも大きな盛り上がりを見せていた。そんな大会を勝ち抜いてきた各チームだけに車いすのスピードは十分。受け渡しの際も、チームメートが車いすを回転させてタイムロスを防ぐなど、チームワークも完璧だ。
ハイレベルな予選を勝ち上がったのは「大阪体育大学」「東北福祉大学」「久留米大学」「さっぽろ健康スポーツ財団」の4チーム。やはり、こうしたスピード競技になると大学生チームの若さと勢いが結果に影響してくるようだが、そんな中に残った社会人チーム「さっぽろ健康スポーツ財団チーム」の健闘に期待がかかる。
オーバルコースで行われる決勝レース。1つめのコーナーでインコース争いになった大学生チームを尻目に、アウトコースからトップに立ったのは「さっぽろ健康スポーツ財団チーム」。試合巧者ぶりに会場から大きな声援が送られる。しかし、車いす競技には大きな自信を持つ「大阪体育大学チーム」と「東北福祉大学チーム」が2人目の走者で早くも逆転。そして、ここからはこの2チームによるデッドヒートが展開される。両チームとも女性の選手も多いのだが、彼女たちも男性と全く遜色ないスピードで力走。白熱したレースは、9人目の走者が「大阪体育大学チーム」をアウトコースから抜き、そのまま逃げ切った「東北福祉大学チーム」が優勝を勝ち取った。
日本一の座は「さっぽろ健康スポーツ財団チーム」に
多くのアスリートが集まった「チャレンジャーズチーム」が7位に終わるなど、予想以上のレベルの高さを感じられた今大会。得点集計の結果、総合優勝は「さっぽろ健康スポーツ財団チーム」に決定! 全ての競技で一貫して好成績を収めたことが勝因だが、2位〜4位は大学生チームが占めるなか、幅広い年齢層の社会人チームがトップとなったのは、決してパワーだけで勝ち進められないパラスポーツ運動会ならではだろう。同チームの井川さんは「最後の車いすリレーは4位でしたが、あれが我々の本来の実力。勝てたのはラッキーだったと思います」と謙遜しながらも、「はるばる海を渡ってきた甲斐がありました」と優勝トロフィーを手に充実感をにじませた。
優勝は「さっぽろ健康スポーツ財団チーム」
札幌市内のスポーツ施設を管理する団体だけあり、日頃からスポーツに親しんでいるメンバーが多いとのこと。幅広い年齢層のチーム員が揃うが、全員が力を合わせて戦っている様子が印象に残った。競技の練習はあまりできなかったとのことだが、同チームを代表して川島さん「会社の名前を背負っているので、社員のみんな、そして北海道ブロック大会で戦った人たちが応援してくれたことが優勝できた理由では」と話してくれた。
笑顔で競技を楽しんだ「久留米大学チーム」
強豪ぞろいの参加チームのなかで4位の好成績を収めただけでなく、どの競技も応援するメンバーも含めて笑顔で楽しんでいたのが「久留米大学チーム」。誰かが好プレーを見せるとチーム全員で喜んでいた姿が印象的だった。「優勝を目指すのはもちろんですが、まず全国大会という場をみんなで楽しもうと話していました。今日は1日楽しかったです! でも、できればもう1つ順位を上げて表彰されたかった」と同チームの小林奈央さんは、悔しさをにじませつつも笑顔を見せた。
【あすチャレ! 運動会 日本一決定戦 リザルト】
優勝:一般財団法人 さっぽろ健康スポーツ財団
準優勝:大阪体育大学
3位:東北福祉大学
4位:久留米大学
5位:株式会社デンソー
6位:マツダ株式会社
7位:チャレンジャーズ(※)
8位:JXTGエネルギー株式会社
※チャレンジャーズ
キャプテン
根木 慎志(シドニーパラリンピック男子車いすバスケットボール日本代表キャプテン)
メンバー
飯沼 誠司(元ライフセービング日本代表監督/アスリートセーブジャパン代表理事)、
伊藤 華英(北京、ロンドンオリンピック競泳日本代表/東京オリンピックパラリンピック競技大会組織委員会 広報職員)、
大林 素子(元全日本女子バレーボール代表/スポーツキャスター)、
岡田 麻央(モデル・タレント/3×3 プロバスケットボール選手/SANKAK.EXE 所属)、
奥野 史子(バルセロナオリンピックアーティスティックスイミング ソロ・デュエット銅メダリスト/スポーツコメンテーター)、
河合 純一(パラリンピック殿堂入り/日本パラリンピアンズ協会 会長)、
髙山 樹里(ソフトボール競技 アトランタ、シドニー銀、アテネ銅メダリスト/日本車椅子ソフトボール協会副会長)、
近藤 英人(ラグビーU-20 日本代表/ジャパンラグビートップリーグ/クボタスピアーズ所属/ウイング・フルバック)、
田村 玲一(ジャパンラグビートップリーグ/クボタスピアーズ所属/フランカー)、
森谷 幸生(車いすバスケットボール選手/NO EXCUSE所属)、
Masuo (動画クリエイター/UUUM 所属)、
SpaceMonkeysTV/SARU(動画クリエイター/UUUM 所属)、
SpaceMonkeysTV /TAKERU(動画クリエイター/UUUM 所属)、
ニッチロー’(ものまね芸人/ナチュラルマジック所属)
text by TEAM A
photo by Hisashi Okamoto