社会人320名が熱狂した「面白すぎる!」と話題のパラスポーツってなんだ!?
2019.05.09.THU 公開
来年はいよいよ東京2020オリンピック・パラリンピックの年。そこで今、開催国として俄然注目が高まってきているのが、パラリンピックで実施される競技だ。一度観戦したり実際に体験してみると、そのユニークなルールや見どころの多さにファンになる人が多いという。そこで今回は、2月13日に武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナで開催された、企業の経営者や社員にパラスポーツを体験してもらう経済同友会主催の『パラスポーツ運動会』を取材。参加した企業17社と経済同友会チームの計18チーム、社会人約320名に、パラスポーツの面白さや魅力について聞いてみた。
体験して一番盛り上がった競技は? 「面白すぎる!」パラスポーツ競技ベスト4
社会人約320名が『パラスポーツ運動会』で体験したのは、ボッチャ、シッティングバレーボール、車いすポートボール、車いすリレーの4つのパラスポーツ。勝利という一つの道へとみんなで向かう、チームプレーの素晴らしさを体験した後に、どの競技が最も盛り上がったか、参加した人たちの声を集計。ベスト4形式でお伝えする。
第1位 車いすリレー
車いすで繋ぐバトン! ゴールが近づくにつれ深まる絆と一体感!
この日、一番の盛り上がりを見せたのは、車いすリレー! ルールは至極簡単。参加者は1チーム15人で競技用車いすをひたすらこいでコースを走り、競技用車いすをバトンにしてゴールを目指すオリジナル競技である。車いすをスムーズに走らせる人もいれば、慣れない操作で苦戦する人も続出したが、シンプルな競技だけに会場は白熱!
「車いすリレーは年齢問わない競技なので、しんどいながらも、みんなで協力しながら本気で取り組めたのがよかった」(30代・男性)
「僕は普段から車いすユーザーなんですが、健常者とスポーツで交流する機会はあまりないのでとても楽しかったですね」(30代・男性)
みんな走り終わった後は、腕はパンパン、息も絶え絶え。しかし、年齢や性別をこえた一体感が生み出され、参加者のみならず応援していた全員が充実の表情をしていたのが印象的だった。
第2位 車いすポートボール
車いすの操作が勝敗の鍵!? 攻守が一瞬で切り替わるエキサイティングな競技
車いすポートボールは、いわば車いすバスケットボールの簡易版。台の上に乗るゴールマン(バスケットボールでいうリングの役割)にボールが渡ると得点になる。初めて車いすに乗る人も多く、その操作に苦戦。パスを受けようとしてうまく移動できなかったり、くるくる回ってしまったりと、思い通りにいかない場面も多かった。しかしパスが綺麗に渡り、得点になると大きな歓声が沸いていた。
「車いすで曲がるのはもちろん、前に進むだけでも難しかった。普段はラグビーをやっているんですけど、勝手が全然違いましたね」(20代・男性)
「車いすの操作とボールを持ってのプレーが、頭では分かっているんですけど動きとなかなか繋がらなくて難しかった」(40代・男性)
普段からスポーツをやっている人でも車いすの操作には悪戦苦闘。なかなかうまくいかない中で、渾身のプレーができるとみんな笑顔だった。
第3位 ボッチャ
知略をめぐらせ運をも味方に! 一投ごとに生まれるドラマを見逃すな!
ボッチャは、対戦する両チームが赤・青のボールに分かれて、それぞれ6球が与えられる。始めにジャックボールという白いボールが投げられ、そのボールを目標球として、投げる、転がす、他のボールに当てるなどのテクニックを駆使し、いかに自分たちのチームのボールを目標球へ近づけるかを競うパラスポーツだ。この日はまず、東京パラリンピック出場を目指す佐藤駿選手とともに、経済同友会の代表幹事の小林喜光氏、東京オリンピック・パラリンピック2020委員会 委員長 大西賢氏、髙島宏平氏らの模擬ゲームで会場を沸かせ、後に企業対抗でゲームがスタート。想定外に味方のボールにぶつかってしまい頭をかかえたり、思わぬミラクルショットに歓喜するなど、みんな和気あいあいとした雰囲気で楽しんでいた。
「カーリングに似ていると聞いていました。初めてのプレーだったけど、ボーリングを普段からやっているので、その経験が活きたかなと」 (30代・女性)
「会社に部活があるくらい、ボッチャに力を入れているんです。何度か遊びで体験したことがあるので、その経験が今回に活きましたね。もう心はボッチャ部です(笑)」(30代・男性)
似ているスポーツも多々あるので、ルールさえ理解すれば、誰でもすぐに楽しめるボッチャ。今後さらに広がりが期待されるパラスポーツである。
第4位 シッティングバレーボール
敵は相手よりお尻!? スピーディーな展開に大興奮!
ラリーポイント制で行われるシッティングバレーボール。パラスポーツ運動会では未経験者でも取り組みやすいようにソフトボールを使用した。最大の特徴は、ボールに触れる際に床にお尻をつけていなくてはならないところ。スパイクを打つ際もちょっとでもお尻が浮いたらリフティングというファールになってしまう。このルールがかなり難しかったようで、体験者たちは悪戦苦闘。そんな中でも奇跡のプレーが多数飛び出し、スピーディーな攻防に大歓声がおくられていた。
「以前、バレーボールをやっていたんですけど、感覚が全然違いました。距離感がかなり近いのが面白かったです」(20代・女性)
「職場であまり関わりがない人と、こういうスポーツを一緒にやってみて、新しい仲間意識が生まれるのはいいですね」(20代・男性)
大企業のトップにも聞いてみた! パラスポーツの面白さとは?
「若い方もお年寄りも、障がい者も健常者もみんなで楽しめるのがパラスポーツなんです」
ー 体験して一番、面白かった種目は?
「車いすポートボールを体験しましたが、全てにおいて面白かったです。自分自身が車いすをうまくコントロールできないのはもどかしいですが、ボールを持ってパスがうまく繋がったときなどの、ちょっとした成功が嬉しかったですね」
ー 今後、体験してみたいと思った競技は?
「実は私はNECボッチャ部の顧問なんですよ(笑)。約30名の部員がいるのですが、社外の方と練習や試合で交流したり、時には一杯飲みながら懇親会形式でやったり、すごくいいコミュニケーションツールになっています。今後もボッチャを続けていきたいですね」
ー パラスポーツの印象は?
「障がい者も健常者もみんなで楽しめるのがパラスポーツなんです。障がい者の方に出会うと、最初はちょっと遠慮してしまうと思うのですが、こういう機会に一緒にスポーツをしているとすごく近しい関係になる。それが、自然な形での心のバリアフリーにもつながり、共生社会実現へのすごくいいきっかけになると思います」
「パラスポーツを自分で体験することによって、例えばトップ選手の動きを見たときに、その素晴らしさが分かると思うんです」
ー 体験して一番、面白かった種目は?
「いろいろやったけど、やっぱりどれも楽しいですね。いつも新鮮な気持ちで臨めるので面白い。これまで何度も体験したけど、もっとああやればよかったと、毎回終わってから思います(笑)」
ー 実際に観戦してみたいと思った競技は?
「ゴールボールは面白いのでぜひ生で観戦したいし、体験もしてみたいです。自分でやってみることによって、例えばトップ選手の動きを見たときに、その素晴らしさが分かると思うんです」
ー パラスポーツの印象は?
「日本人は障がいのある方に対して、妙にアプローチが丁寧過ぎるんです。共生社会について理解のある国は、逆にそんなに特別扱いしないので、変に構えずにアプローチをすればいい。パラスポーツはそういった、共生社会の在り方を学ぶいい機会だと思いますよ」
今回のパラスポーツ運動会に参加、体験した人から、「今後はパラスポーツのイベントにもっと積極的に参加したい」、「今後も多くの人に興味を持っていただけるように、パラスポーツをサポートしていきたいです」、「2020年の東京パラリンピックがゴールではなく、あくまで通過点の気持ちで取り組んでいけば、結果的に2020年が成功するんじゃないかなと思います」など、様々な声を聞くことができた。2020年東京パラリンピック、さらにその先へ。パラスポーツをより身近な存在として、その魅力や楽しさを伝えるのに重要な役割を担うイベントであった。
Text by Jun Nakazawa(Parasapo Lab)
Photo by Masayuki Ichinose