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シッティングバレーボール
シッティングバレーボールチャレンジマッチ2019・女子日本代表が初めて経験したものとは?
日本、中国、カナダ、イタリアの女子代表チームによる国際親善試合「シッティングバレーボールチャレンジマッチ2019」が5月23日から26日、千葉ポートアリーナで開催された。参加の4ヵ国は全て東京2020パラリンピックへの出場が見込まれているチーム。加えて、来日した3チームは世界ランキングで日本よりも上位に位置することが常の強豪国だけに、女子日本代表にとっては文字通りのチャレンジマッチとなった。
2020年の東京パラリンピックでは千葉市の幕張メッセが競技会場となることもあって、今大会には千葉県と千葉市も共催に名を連ねる。会場には連日、地元の小中高生が訪れ、選手たちに大きな声援を送った。「国内の大会で、こんなに大きな声援をもらうのは初めて」と選手たちが声を揃えるように、会場はホームならではの温かい雰囲気に包まれたが、慣れない選手たちにはプレッシャーになる部分もあったようだ。
DAY1~硬さが取れぬままカナダ戦を落とす~
1日目から3日目までは予選リーグ、最終日は上位2チームによる決勝戦と、3位決定戦が行われるスケジュール。日本はカナダ、中国、イタリアの順で対戦したが、カナダ戦は初戦ということもあり、明らかに日本のボールがつながらない。1本目のレシーブがセッターにつながらない場面も多く、結果として攻撃の形が作れなかった。
キャプテンの西家道代がスパイクを決める場面もあったものの、得点の多くはサーブかブロック。思うように攻撃できないまま、日本はセットカウント0-3でこの試合を落としてしまう。試合後、西家は「硬かった。その一言です」と総括。会場の雰囲気については「(過去に出場した)パラリンピックよりも良いくらい。子どもたちの声援もスティックバルーンの応援も本当にパワーになりました」と話したが、日本の真野嘉久監督は「声援で仲間の声が聞こえず、連携に響いたのでは」と苦い顔。東京パラリンピック本番では大声援を味方につけなければならないだけに、明らかな課題を手にした一戦になった。
DAY2~中国を相手に復調を見せる~
迎えたアジア最強の中国戦。前日に比べると硬さの取れた日本チームは第1セットの序盤に中国をリードする健闘を見せる。ロンドンパラリンピックの日本代表で、今大会で5年ぶりに代表復帰した竹井(旧性:粟野)幸智恵をリベロに起用した布陣も功を奏したようだ。しかし、そこからは中国が世界ランキング3位の実力をいかんなく発揮。丁寧なトスさばきからクイックやツーアタックを含めた多彩な攻撃で日本を引き離す。とくに高さのある XU Jieのスパイクは強烈だった。
日本も西家が相手のタイミングを外して相手のブロックの裏に落とすソフトアタックを決めるものの、力の差を見せつけられ、セットカウント0-3で中国が勝利。ただ、試合後に真野監督が「点差ほどの怖さは感じなかった。昨日はほとんどなかった、こちらの攻撃で会場が沸く場面も何度か作れた」と語ったように、菊池智子や赤倉幸恵といった選手も得点を挙げ、翌日に希望をつないだ。
DAY3~イタリアの3枚攻撃に屈する~
3日目の相手は西家キャプテンが「格上なので一番勝ちたい相手」と語るイタリア。高さやパワーに加えて、セッターを後ろに下げて前衛を3人とする3枚攻撃が脅威となる。実際に試合ではその3枚攻撃に手を焼くことになるが、前日以上にボールがつながるようになった日本は、それでもボールを拾って粘る。2セット目には20得点を挙げ、リードする場面をつくったもののイタリアに振り切られてしまった。
セットカウントはまたしても0-3。ただ、この日はセッターに入った赤倉は「最後はパワーで押し切られたが、ラリーまではできた。ラリーを最後まで制することができれば勝てる」と試合内容に自信を感じた様子。真野監督も「カナダ、中国、イタリアと全く違うタイプの3チームと対戦できて、いい経験になった。ボールがコントロールできるようになれば、勝てる」と手応えを掴んだようだった。
DAY4~カナダ相手に念願のセットを奪う~
最終日、3位決定戦の相手は初日に対戦したカナダ。初戦では精彩を欠いた内容となったが、この日の日本は見違えるような動きを見せる。第1セットの出だしは連続で10失点を喫するものの、うまく流れを断ち切りベテランの齊藤洋子や菊池がスパイクを決めるなど良い攻撃のかたちを作る。ボールがつながるだけでなく、スパイクまで持って行けている印象だ。1、2セットは落としたものの、真野監督の「ここまではウォーミングアップ。ここから3セット取るぞ」という言葉に奮起したチームは3セット目を奪い、今大会初のセットを獲得。菊池が「狙っていた」というサービスエースを何度も決め、ブロックやスパイクでも得点を重ねる。最後はキャプテン西家がスパイクを決め、日本が目指していた形が最終日にようやく成就した。
続く第4セットもラリーで好勝負を展開するも、最後は地力の差が出たか25-20でカナダが競り勝った。しかし、第1セット以外は得点されれば取り返すというゲーム展開が続き、多くの観客が集まった会場は大いに盛り上がった。
試合後、真野監督は「1セットを取っただけではダメだが、そこからしか始まらない」と悔しさをにじませつつも前を向く。ロンドンパラリンピック後から課題として取り組み2年ほど前から専任コーチも入れたというフィジカルの強化が徐々に出てきているとした上で「あと半年もすれば、本格的な成果が出るはず」と語った。
東京パラリンピックでの目標を問われると「何色でもいいからメダル」と答え、そのためにはこの日の決勝でイタリアを3-0で振り切った中国に勝つ力をつける必要があると強調。最後は「これだけの声援の中で世界の強豪と対戦できたことはかけがえのない経験。22年間やっているが、私も家族に会場で応援してもらえたのは初めて。選手たちも大きな力になったはず」と主催者に感謝。ホームで強豪国を迎えた今大会で、東京パラリンピック本番に向けて大きな収穫を手にしたことは間違いない。
1位:中国
2位:イタリア
3位:カナダ
4位:日 本
text by TEAM A
photo by X-1