-
- 競技
-
車いすラグビー
どの競技よりも激しいのに男女混合! 車いすラグビーの面白さにハマる人が続出!
2019.06.24.MON 公開
「車いすラグビー」ってどんなスポーツ?
簡単に言うと・・・
① 車いすに乗って戦うラグビー
② 車いす同士のぶつかり合いOK
③ 「マーダーボール(殺人球技)」と言われていたほど激しい
④日本は、 東京2020パラリンピックで金メダル候補
数あるパラリンピック競技の中で唯一、車いす同士の意図的なタックルが許され、その激しさからかつては「マーダーボール(殺人球技)」という異名を持っていた車いすラグビー。元々は四肢麻痺者など比較的重い障がいのある人に向けて考案されたスポーツでありながら、コート上では本家のラグビーに負けずとも劣らないアグレッシブかつ激しい攻防が繰り広げられることで人気を博している。
日本では、車いすラグビーが1996年のアトランタパラリンピックでデモンストレーション競技として初登場した翌年に連盟が設立。以来、着実に普及・強化が進み、日本代表は2016年のリオパラリンピックの銅メダルに続いて2018年の世界選手権では初優勝を遂げるなど目覚ましい活躍を見せている。実は東京2020パラリンピックで最も金メダルに近いと言われてる車いすの団体競技が、この車いすラグビーなのだ。
一般のラグビーと何が違うの?
① 前方へのパスが認められている
一般競技と共通点の多い車いすバスケットボールなどと比べ、車いすラグビーはより独自色の濃いパラスポーツと言える。まず、一般のラグビーはサッカーと同じような屋外ピッチで行われるが、車いすラグビーのフィールドはバスケットボールと同じ広さの室内コート。また15人制や7人制が主なラグビーに対して車いすラグビーは4対4で試合が行われる。そして一般のラグビーとの最も明らかな違いが「前方へのパス」が許されていることだ。
一方でボールを保持した状態で相手方のエンドラインに2つの車輪が乗る、あるいは通過すると1点が入る得点方法は一般のラグビーの「トライ」とほぼ変わらない。一般のラグビーをベースに、バスケットボールやアイスホッケーなどの要素も組み合わさり、車いすラグビーならではのスペクタクルな競技性が生み出されているわけだ。
② ヒザの上に乗せてボールを運ぶ
ボールも一般のラグビーと大きく異なる。ラグビーと聞くとあの象徴的な「楕円球」が頭にパッと思い浮かぶ人も多いと思うけれど、車いすラグビーではバレーボールの5号球を基に開発された丸い公式専用球が使われる。そのボールをヒザ上に置いて(10秒以内に1回のドリブルまたはパスが必要)ゴールまで運ぶのが基本ルールだ。ただし脚が欠損しているなどの選手はヒザ上でボールが保持できないため、車いすに専用のボールホルダーを装着することが認められている。
また試合中につけるグローブも特徴的で、グリップ面がザラザラしているのでボールが滑りにくく、頸髄損傷などの障がいで握力の弱い選手でもボールが保持しやすくなっている。
③ 独自の点数制で行われるチーム編成
車いすラグビーでは、すべての選手を上肢や体幹機能の障がいの程度によってクラス分けしている。0.5点~3.5点(障がいが重い~障がいが軽い)とそれぞれに持ち点がつけられ、1チーム4人の合計が原則8点以下で構成される。また選手交代に制限はなく、コート上の4人の合計持ち点が8点以下であればバスケットボールのように試合中に何度でも選手の入れ替えが可能だ。
そして「男女混同」であることも車いすラグビーを魅力的な競技にしている要因の一つ。女性選手がチームに加わる場合は、1名につき4人の合計持ち点から0.5点がマイナスされるので、女性も活躍できるうえ、持ち点の高い男性選手を複数起用できて戦術の幅も広がる。そのあたりのチーム戦略も大きな見どころなのである。ちなみに日本代表では倉橋香衣選手が昨年の世界選手権に出場した。
ココに注目!観戦が面白くなるポイントは?
① 車いすの激しいぶつかり合いに注目!
初めて車いすラグビーを観戦した人は、まず間違いなく、車いす同士が全速力でぶつかり合う「ガシャン!」という金属音に驚かされるはず。接触プレーの迫力という点で、おそらく車いすラグビーに勝る競技はないだろう。その風情はまさにコート上の格闘技だ。選手たちの多くはその激しさに魅了されたことがきっかけで車いすラグビーに本格的に取り組むようになったと言い、それは女性選手も例外ではない。
しかし、自分の車いすで相手の車いすにタックルすることは認められているが、車輪の中心より後方への危険なタックルは禁止されており、手で他の選手の車いすや体に触れることも反則。あくまでルールあっての激しさ。そこも「紳士のスポーツ」と呼ばれるラグビーをベースにした車いすラグビーの魅力と言えるだろう。
② 装甲車のような車いすがカッコイイ
「ラグ車」と呼ばれる競技用車いすも車いすラグビーの大きな醍醐味である。装甲車を思わせる無骨なルックスでありながら、ハの字型に取り付けられたタイヤが機動力を高め、またタックルからの保護目的でタイヤにはスポークカバーが装着されている。スピード、防御力を兼ね備えたラグ車は、まさに車いすラグビーの競技性そのものを表している。
なお、ラグ車は攻撃型と守備型の2種類。ハイポインターと呼ばれる障がいの程度が軽い選手が使う攻撃型は丸みを帯びたコンパクトな形状で小回りがきくようになっており、障がいの程度が重いローポインターが使う守備型は相手の動きをブロックするためのバンパーが突き出ているのが特徴。まずは乗っているラグ車を見て、選手たち個々の役割を把握するところから始めてみると、より深い視点で試合観戦ができるはずだ。
③ ゲームが盛り上がる、絶妙なチームワーク戦略
8分×4ピリオドで行われ、常に攻守が目まぐるしく入れ替わる車いすラグビーの試合。その勝敗の鍵を握るのは、前述のチームの合計持ち点8点をどのような4人で構成するかというチーム戦略。ハイポインターは主に攻撃、逆にローポインターは守備面を担うが、彼ら両方のコンビネーションが熟してこそ相手を凌駕する効果的な攻撃を繰り出すことができる。とくにローポインターが相手ハイポインターを巧みにブロックし、味方のハイポインターの得点に繋げるビッグプレーは会場がドッと沸き上がるポイントだ。
車いすラグビーに注目!
昨年の世界選手権で並みいる世界の強豪を押しのけ初優勝を飾るなど、今最も勢いに乗っている日本の車いすラグビー。名実ともに世界屈指のプレーヤーとなったエース池崎大輔選手や世界選手権で日本チームを世界一に導いたキャプテン池透暢選手、現役高校生の橋本勝也選手、そしてメディアからも注目を集める女性アスリート倉橋香衣選手など、個性豊かな選手たちが繰り広げる、屈強な海外選手たちとの激しいバトルは胸を打つものがある。
金メダル候補として臨むの東京2020パラリンピックは必見。ぜひ、日本代表の勇姿を目の当たりにしよう!
車いすラグビーの種目、クラス分けが書かれたページはこちら
text by Kai Tokuhara(Parasapo Lab)
photo by Getty Images Sport
photo by Getty Images Sport
参考資料:
『かんたん!車いすラグビーガイド』(外部サイト:公益財団法人日本パラスポーツ協会)
『かんたん!車いすラグビーガイド』(外部サイト:公益財団法人日本パラスポーツ協会)