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簡単な測定で自分にぴったりのスポーツを見つける。次世代のアスリート発掘を目指すプロジェクト始動
4月11日、日本財団ビルにおいて、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のオフィシャルパートナーである日本航空(JAL)より、「JALネクストアスリートプロジェクト」始動の記者発表が行われた。
運動能力を測定して適性の競技を提案
スポーツを通した次世代育成に取り組んでいるJALが一般社団法人能力発見協会(DOSA)とともに数年前から温めてきたというこのプロジェクトは、大きく分けてふたつの柱がある。
ひとつ目は、次世代を担う小学校から大学生を対象としたスポーツ能力測定会。従来から学校などで行われている体力測定をイメージするかもしれないが、それとは異なるという。
「専用の測定機器で、ジャンプ力やバランス能力、視覚反応力、スイングスピードといった基礎能力を測定。その結果をもとに、その人の武器となりうる運動能力を提示するとともに、その能力を活かせるスポーツを10種目提案します」とは、DOSA担当者。
JALの大川順子代表取締役専務執行役員も、「子どもたちのスポーツ離れが進み、体力・運動能力が低下傾向にあると指摘されています。そうした子どもたちにスポーツに興味を持つとともに、自分の特性に合ったスポーツに出合うきっかけにしていただきたいですね」と意気込む。
この測定にチャレンジしたのが、ゲストとして登壇した女子レスリングの吉田沙保里だ。その場で「ジャンプ力測定」と左右の足のバランス能力を測る「リカバリーバランス測定」、そして「視覚反応力ステップ測定」を体験。デモンストレーションにもかかわらず、DOSA担当者が「さすがです」と思わずうなる数値を叩き出した。その測定値を元に吉田に向いていると提示された競技が興味深い。なんと1位はバスケットボール。続く2位はフェンシング、そして3位がラグビー。本職のレスリングは4位という結果に本人も会場も湧いた。この結果に、「母の影響でテニスをしていたこともあり、実は球技も好きなんですよ。次はラグビーにチャレンジしてみようかな」と本人もまんざらでもない様子だった。
東京パラで活躍できるパラアスリートも発掘
もうひとつの柱が、パラリンピックを目指すアスリートの発掘だ。
2020年の東京大会に向けて、メダルを狙えるパラアスリートを発掘するために、競技人口の拡大と選手層の厚みを増すことを目標に、年齢や競技経験を問わず、幅広く参加を呼びかける。
「障がいと一口に言っても、車いす利用者もいれば、視覚障がいや知的障がい、精神障がいの方もいますので、それぞれの障がいに合わせて運動能力が測定できる機器やシステムを開発しました」(DOSA担当者)
今回は、パラアスリートを代表して車いすテニスの上地結衣が挑戦。「測定と聞くとがんばりたくなります」と笑う上地も、車椅子バスケットボール用の車いすで8の字を描くように動き、その速さを測定する「敏捷性測定」、先端にスピードセンサーを付けたバットを振る「スイングスピード測定」、そして「視覚反応腕振り測定」を体験。この結果を元に、一人ひとりに向いているパラスポーツを提案するとともに、そのスポーツが習える場所や施設、イベント情報も提供されると聞き、「パラスポーツをしてみたいなと思っても、どこに行けばいいかわからないことがあるので、情報をもらえるのはありがたいですね」と感心しきりだった。
スポーツに親しむきっかけに
子どもたちのスポーツ離れは、そのまま日本スポーツ界の底辺の縮小と競技レベルの低下に直結する問題だ。吉田も「おいとめいもレスリングをしているのですが、それ以外の時間はずっとゲームをしているんです。あの姿を見ると、子どもたちのスポーツ離れや体力の低下もうなずけます」と指摘する。それだけに、子どもたちがスポーツに取り組むきっかけづくりとして今回のスポーツ能力測定に期待を寄せているという。
「簡単なテストをするだけで、自分に向いているスポーツを選んでくれるなんて、すごいですし、『このスポーツが向いている』と言われれば、ちょっとやってみようかなって思いますよね。どんなスポーツをすればいいか迷っている子どもたちには、まずは測定会に足を運んでみてほしいです」
上地も自分に向いているスポーツが手軽にわかるメリットを感じたという。
「スポーツの選択肢って意外と狭くて、偶然出会えたスポーツにしか取り組めないですよね。でも、能力測定を受ければ、思いがけないスポーツに出会えて、それを試せるチャンスができるわけです。パラスポーツは、健常者スポーツに比べて選手生命が長いものが多いですから、子どもはもちろん大人の方もどんどん参加して、もっと多くの方に楽しんでもらえるようになるとうれしいです」
吉田の測定結果からもわかるように、今取り組んでいるスポーツとは異なる競技・種目が向いているとの結果が出ることもある。その場合、競技の転向を検討するケースもあるかもしれないが、上地は、それは決して悪いことではないという。
「私自身は、姉の影響で、車椅子バスケットボールから車いすテニスに転向したのですが、バスケットボールで鍛えた俊敏性やチェアワークはテニスでも役立っています。どんな競技でも楽しんで取り組むこと、そしてがんばることが大切だと思います」
最後に、オリンピアン・パラリンピアンを目指す人たちに向けて、両選手が熱いメッセージを送った。
「自分で夢や目標を見つけたら、それに向かってがんばれるものです。がんばると決めたら、あとは自分次第。あきらめずに続けてください」(吉田)
「最初はきっとそのスポーツが“楽しい”から始めると思うんです。上を目指す過程で苦しいときがあると思いますが、そんなときこそ、そのスポーツを始めたころの気持ちを思い出して、乗り越えてほしいです」(上地)
なお、スポーツ能力測定会とパラアスリート発掘プロジェクトは、地震による被害からの復興を目指す熊本を皮切りに、2020年までに全都道府県で実施予定だ。
text&photos by TEAM A