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シッティングバレーボール
シッティングバレーボール女子日本代表、価値ある3位!~NOMURA WOMEN'S WORLD SUPER6 2019~
日本初開催となるシッティングバレーボールの「NOMURA WOMEN’S WORLD SUPER 6 2019」が11月13日から5日間にわたって東京・台東リバーサイドスポーツセンターで開催された。出場したのはアメリカ、ロシア、ウクライナ、そして日本の女子代表チーム。直前の出場キャンセルなどもあり、参加が4ヵ国になったとはいえ、ランキング上位の強豪国が揃った今大会を日本パラバレーボール協会の代表理事でもある女子日本代表チームの真野嘉久監督は「夢のようなこと」と話す。大会は13日から16日の4日間で予選が行われ、17日には予選上位チームによる決勝と、下位の2チームによる3位決定戦が行われた。
ウクライナ代表を相手に歴史的勝利!
歴史が動いたのは予選最終日である11月16日。この日、ダブルヘッダーとなった日本代表チームは2試合目でウクライナ代表チームと対戦した。ここまで予選を4試合戦ってきた日本チームだが、残念ながら未勝利どころか、1セットも取れていない状況だった。しかし、真野監督が「今大会の目標はウクライナに勝つこと」と大会前から語ってきたことは、チーム全員にしっかりと伝わっていた。「ウクライナには前日に負けているので、何としても1勝1敗に持ち込んで、明日(順位決定戦で)決着をつけると全員で話していた」とキャプテンの西家道代が語ったように、この試合はチーム全員が”勝つために”コートに入っていた。
今大会に向けて練習してきたという、高いトスからドライブをかけた山なりのボールのサーブが冴え、序盤に西家がサービスエースを決める。ラリーが続く場面でも、最後までボールにくらいつき、相手のミスを誘い得点を重ねる。試合時間のほとんどをリードしたまま25-23で第1セットを取ると、その勢いで2セット目も連取。体格で勝るウクライナ選手を相手にネット際で競り合いになっても競り勝つ場面が目立つ。
第3セットこそ落としたものの、第4セットは25-20で競り勝ち、セットカウント3-1で日本チームが国内で開催された国際大会では初となる勝利を挙げた。試合後、真野監督が一番の勝因と語ったのは、前述のドライブをかけたサーブ。シッティングバレーボールではサーブブロックが許されるため、相手チームの高いブロックを避けながら強力なサーブを打つために練習を積んできたという。西家は「レシーブが上がり、トスがつながってエースがしっかり決めるというセオリーができたこと」と勝因を語る。そのエースである小方心緒吏は「一度、相手のブロックにかかっても、冷静にコースを狙えた」と話し、「明日はストレートで勝ちます」と短くコメントし、翌日の3位決定戦に備えて足早に試合場を後にした。
ウクライナ代表に連勝し3位表彰台を決める
迎えた大会最終日の3位決定戦。対戦相手は前日に勝利したばかりのウクライナ代表だ。その敗戦を踏まえ、気を引き締め直してきたはずの相手チームに対して、日本代表はさらにレベルアップした闘いを見せる。第1セットの序盤こそリードを許し、一時は5-11と6点差をつけられるものの、そこで集中を切らすことなく粘って逆転。25-20でこのセットを取る。途中からは、ウクライナが高さを活かしたスパイクを打っても、ほぼ必ずレシーブでボールが上がり、滅多なことでは得点されないと安心して見ていられる展開だった。
続く第2セットはサーブに力強さが増し、10得点近くをサービスエースで挙げて25-22でセットを連取。とくに西家と住友美紀子のサーブがキレている。そして第3セットは、完全な横綱相撲。ウクライナに付け入る隙を全く与えず、25-15の点差で日本がストレート勝ちで3位を決めた。世界ランキングではウクライナが4位、日本が11位と相手のほうが上位だが、日本チームのほうが実力では上であることを証明した。
試合後、キャプテンの西家は「ウクライナとは1勝1敗で今日決着をつけるというのは全員で言ってきたことで、今日は1セット先に取れればストレートで行けるという自信はみんな持っていた」と明かし、前日の1勝が大きな自信につながっていたと語る。スパイクで相手のブロックに当ててアウトを取る場面が多かったことについては「昨日まではトスを速くしていたが、今朝の練習でゆっくり高く上げてブロックアウトを狙う作戦に切り替えた。トスが大きい分、相手のブロックを冷静に見て当てることができた」と振り返る。
価値ある連勝、そして3位という順位について真野監督は「ランキングは向こうが上だが実力的には我々のほうが上だというのはずっと言ってきたこと。今まではそれでも負けてしまっていたが、昨日今日と勝ち切れたことの意味は大きい」と語る。勝因については「リオパラリンピックの出場を逃して以来、骨盤と肩甲骨周りの筋肉と可動域を高めるトレーニングを重ね、基本の体作りに取り組んできたことの成果」を挙げた。「ネット際の攻防でも押し負けて転がってしまう場面がなくなった。来年にはさらにその成果が出てくるだろう」と東京パラリンピックに向けた自信をのぞかせた。
多彩な攻撃を見せたアメリカが優勝
決勝戦ではアメリカ代表とロシア代表が対戦。ランキング1位のアメリカが持ち味である前衛が位置を変えながら多彩なパターンでスパイクを打つ厚みのある攻撃を存分に発揮し、第3セットは一時7点差でリードされたものの3-0のストレート勝ちを収めた。そのパワフルなスパイクなど攻撃面に目が行きがちだが、予選で対戦した際、日本チームのエースである小方は「全員がボールが落ちきるまでしっかり追って拾っている。体格などは別にして、その点は見習わなければ」と語ったように、最後までボールに食らいついて上げるディフェンス面での強さも特筆もの。きちんとレシーブが上がるからこそ、多彩な攻撃につなげられるというバレーボールの基本を思い知らせてくれた。試合後、アメリカチームのHOLLOWAY KATHRYNは「チームで1つになって、1つずつのプレーを大事に戦った結果」と謙虚に大会を振り返り、「2020年の東京がゴール。そこまでに何ができるか課題を持って過ごしたい」と来年の東京パラリンピックに目を向けていた。また、アメリカチームを指揮したEDWARDS TIA監督は「プレッシャーも大きかったが、今年最後の大会で優勝できてうれしい。来年の東京大会に向けて大きな意味のある優勝だったと思う」と総括した。
今大会の意義について真野監督は「全てのチームが東京パラリンピックに出てくる可能性が高い。その高さを実際の試合で体感し、2回ずつ対戦したことで選手たちの顔やクセもしっかり認識できたはず。それが来年の本番では必ず活きてくる」と語り、さらにその中で「勝ち切る経験ができたことが何よりも大きい」と東京パラリンピックに向けて、手応えを掴んでいる様子だった。
東京パラリンピック本番まであとわずか。今大会で大きなステップを踏んだ日本代表は来年の夏、会場となる幕張メッセにどんな姿で現れるか。
1位:アメリカ
2位:ロシア
3位:日本
4位:ウクライナ
text by TEAM A
photo by X-1