パラスポーツ専用体育館「日本財団パラアリーナ」18年5月完成に向け起工式

パラスポーツ専用体育館「日本財団パラアリーナ」18年5月完成に向け起工式
2017.12.20.WED 公開

12月20日、日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)は、2020年に向ける競技団体の基盤強化のためのパラスポーツ専用体育館「日本財団パラアリーナ」の建設を発表した。

練習場所に関する課題解決のために

※完成イメージ図
※完成イメージ図

パラスポーツでは競技を実施できる施設の少なさがしばしば問題になっている。とくに体育館で行うウィルチェアーラグビーや車いすバスケットボールなどの車いす競技は、床を傷つけるなどの理由による利用拒否やバリアフリーの問題で日常的な練習場所を確保するのが困難な状況だ。さらに昨今、パラスポーツに関する普及啓発イベントの需要が増えているのに対し、イベントを実施できる体育館も不足している。そんな問題を解決しようと建設することになったのがパラスポーツ専用の新たな体育館「日本財団パラアリーナ」だ。建設場所はお台場・湾岸エリアの船の科学館敷地内で、東京パラリンピックの正式競技の競技団体、およびその所属のクラブチームまたは個人などに貸し出す。

パラサポの小澤直常務理事は、体育館建設の背景をこう話す。

「競技団体や選手にヒアリングをすると、クラブチームの練習のために時間をかけて他県に通っていたり、他チームと合同で練習をしていたりしていて、練習場所の確保に苦慮しているという。しかし、2020年の東京パラリンピックは待ってくれない。競技力強化のためにも、今やらなくてはならないという関係者の想いが結集し、体育館の建設に踏み切った」

事実、2016年7月に日本パラリンピアンズ協会が行った調査によると、障がいを理由に施設利用を断られたり、条件付きで認められた経験があるパラリンピアンが約2割いた。また、競技力向上のための施設が使えないなど練習場所に関する課題を抱えている選手も多い。パラサポも、2016年6月より日本財団ビル地下にある小スペースをパワーリフティング、車いすフェンシング、ボッチャなどのパラリンピック競技団体に貸し出しているが、さらなる場所の必要性を感じていた。

また小澤常務理事は「当センターでパラスポーツ体験イベントを開催しようというときも体育館の確保に苦労する。今は大学などに無理を言って借りているが、計画的に実施できるようになれば、例えば修学旅行生に体験授業を取り入れてもらい、地方のパラリンピック関心喚起に協力できるのでは」と様々な課題を解決に向ける可能性を示した。さらに、ゆくゆくは2020年に活躍するボランティア研修や本番の練習場所としてもフル活用させたい考えだ。

バスケットボール2面分のメインフロア、バリアフリー設計のトイレやトレーニングルーム、駐車場などを備えた「日本財団パラアリーナ」は、2018年5月末に完成予定だ。

船の科学館敷地内で起工式を実施

パラサポの山脇会長が鍬入れを行った
パラサポの山脇会長が鍬入れを行った

この日は船の科学館敷地内で起工式も行われ、日本海事科学振興財団の鈴木浩司常務理事、森喜朗東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長、鳥原光憲日本障がい者スポーツ協会会長らが出席。施主であるパラサポの山脇康会長と施工業者の井口哲朗JSC株式会社代表取締役社長が鍬入れを行い、ウィルチェアーラグビー選手の島川慎一、車いすバスケットボール選手の添田智恵らが玉串奉奠を行うなど、神事が滞りなく執り行われた。

その後、パラサポの山脇会長が挨拶。「パラリンピックムーブメントの発信拠点としての役割を果たせるよう全力で取り組んでいきたい」と述べた。

続いて、日本財団の笹川陽平会長が登壇し、「たんなる練習場ではなく、修学旅行生のパラスポーツ体験の場などにできれば大きな意義がある。2020年に向けて協力ができ、大変名誉なこと」と話した。

また、この日はウィルチェアーラグビーのリオパラリンピック銅メダリスト・島川慎一、車いすバスケットボールのシドニーパラリンピック銅メダリスト・添田智恵も出席した。

「こんな施設を待ちわびていました」

と喜びの声を上げたのは、競技歴18年の島川だ。

練習場所確保の苦労を語るパラリンピアンの島川
練習場所確保の苦労を語るパラリンピアンの島川

「今も練習場所の確保には苦労している。チームは東京を拠点にしているが、練習は栃木などで行っているのが現状。僕自身、アメリカの国内リーグに参戦していて、昔からパラスポーツ専用体育館を知っているので、ずっと日本にもできないかなと思っていた。また、ウィルチェアーラグビーは重度障がいの選手も多く、一般のスポーツジムではアクセシブルの面で難しかったウエイトトレーニングをするための施設もあってたいへんありがたい。他の競技団体の皆さんと切磋琢磨しながら、いい結果を出せるようにがんばっていきたいです」

一方の添田は、現役として2020年の舞台を目指しながらも、車いすバスケットボールの普及活動に取り組んでいる。

「車いすを操る選手たちのすごさ、気迫、緊張感を生で感じてもらい、2020年に向けて会場が満員になるようにその魅力を伝えていきたい」

「日本財団パラアリーナ」は、競技用車いすに乗ったままでも使用できるトイレ、移乗せずに使用できるトレーニング機器、プレーの分析に利用できる天井のカメラなどを準備する予定で、競技団体や選手にヒアリングをしながらオープンの日を迎えるつもりだ。パラサポは今後も、2020年の東京パラリンピックに向けて、競技団体とともに課題解決に取り組んでいく。

関係者らが集結し、工事の安全を祈った
関係者らが集結し、工事の安全を祈った
普及活動に利用したいと話した添田
普及活動に利用したいと話した添田

<施設概要>

名称: 日本財団パラアリーナ
所在地: 船の科学館敷地内(東京都品川区東八潮3-1)
竣工時期: 2018年5月末
主な仕様: 建築面積 3174.76㎡
延床面積:2981.34㎡
鉄骨造 地上1階建
利用料金: 無料
利用方法: 事前登録・予約制 ※詳細は未定
設備: メインフロア バスケットボール2面分、天井高6850mm~8050mm
トレーニングルーム 163.094㎡
会議室 2室
男女更衣室、シャワールーム、トイレ、医務室
器具庫、倉庫、管理人室、駐車場

text&photo by Parasapo

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