-
- 競技
-
車いすラグビー
[ジャパンパラウィルチェアーラグビー競技大会]世界のトップに肉薄。新生・日本、次につながる2位
リオパラリンピック金メダルのオーストラリア、銀メダルのアメリカ、そして同銅メダルの日本が出場した「ジャパンパラウィルチェアーラグビー競技大会」が5月25日から4日間にわたり、千葉ポートアリーナで行われた。
リオ後、再出発した日本チームは、アメリカ人のケビン・オアー氏をヘッドコーチ(HC)として招へい。2月の就任会見で「東京パラリンピックで金メダルを獲るのが最大の目標」と話した新HCは、「とくにレベルの高い試合では、ちょっとしたミスをなくすことが重要」と語っており、拮抗する勢力のなかで勝ち抜けるチームの強化に力を注いでいる。
リオパラ金のオーストラリアに快勝
予選2位(3勝3敗)の日本は、最終日の28日、まず3位決定戦で同3位のオーストラリアと対戦。パラリンピック2連覇を導いたスーパーエースのライリー・バット(3.5)を欠くオーストラリアに対して、エース池崎大輔(3.0)、パワーのある乗松聖矢(1.5)らで激しくプレッシャーをかけ、つけ入る隙を与えない。一度もリードを許さなかった日本は69対55で勝利。決勝に駒を進めた。
試合後、「完勝でしたね」と声を弾ませるに報道陣に、池崎は淡々と答える。
「スペースを作るなどして自分たちのペースでやれたが、ミスも多かった。次はミスをゼロにして挑まなければならない」
強者相手の快勝にも決して満足しないエースは、先を見据え、あくまでも完璧主義を貫いた。
近づいたアメリカの背中
その約1時間半後に行われた決勝の相手は、予選で一勝もできなかったアメリカだ。日本は、第1ピリオドで11対13とリードされたが、第2ピリオドでベテラン島川慎一(3.0)、キャプテンの池透暢(3.0)が立て続けに得点して試合を振り出しに戻すと、後半戦も目まぐるしくメンバーチェンジをしながら、試合巧者のアメリカを粘り強く追いかける。だが、残り21秒、日本はゴール前のキーエリアでファールを犯してターンオーバーを許してしまい、点差を2点に広げてしまう。その後、タイムアウトを使いながら相手ゴールに攻め込む戦略的なプレーで巻き返しを狙ったものの、残り0.6秒から繰り出した池のロングパスは、ゴール前の羽賀理之(2.0)と池崎にわずか届かず。日本は惜しくも51対52で敗れ、優勝はならなかった。
日本の長所を矢継ぎ早につぶしていくアメリカのディフェンスを、素早いトランジションや連携で何度も振り切ったが、勝利は手にできなかった。
池は、「残り5分を切ってから、しっかりタイムアウトを取っておけば、もしかすると延長戦に持ち込めたかもしれない。わずかコンマ何秒の判断力がこういう結果につながった」と、流れる汗を拭いながら自らのミスを悔やんだ。
予選も含めて4戦全敗。だが、これまで10点差をつけられていたアメリカに1点差と肉薄した。試合終了の瞬間、コートにいた羽賀は悔しさを見せつつも「次につながる試合だった」と前を向く。
選手たちも「チームの成長を感じられた」と口をそろえた。
決戦で勝てるチームへ
「もっと個人のスキルも、体力も、チーム力もつけていきたい」
オーストラリアとアメリカを倒したい思いから、カナダなどでクラブチームの大会にも参加し、普段から当たりの強い海外選手の中に身を置く池崎は、さらなるレベルアップを誓う。
一点差の惜敗にも「まだまだ詰めが甘いということ。これが大きな大会で、金メダルか銀メダルかという局面だったら……」と気を引き締めて語った。
アメリカの攻守の要であるチャック・アオキも言うように、「日本はうまくなっているし、大きな力の差は感じない」。昨年のリオパラリンピックでも予選でアメリカと1点差ゲームを演じている。
2020年の東京パラリンピックに向けて、日本はまず“一点の差”を埋めていく。 ホームのプレッシャーの中でいかに地力を発揮できるか。激しいプレッシャーの中でいかにミスなくパスできるか……それぞれが明確な課題を持って臨み、経験を積んだ今大会。強豪との対戦だからこそ得ることのできた経験と悔しさを糧にチームは成長を続けていくことだろう。
※カッコ内は、障がいの種類やレベルによって分けられた持ち点。
text by Asuka Senaga
photo by X-1