岩田朋之さん
公益財団法人日本サッカー協会
人事部
ブラインド(視覚障がい)やCP(脳性まひ)、アンプティ(切断)、デフ(聴覚障がい)など、パラスポーツの中でも多彩な活動が行われている障がい者サッカー。国内のサッカー競技団体を統括する公益財団法人日本サッカー協会(JFA)は、「誰もが、いつでも、どこでもサッカーを身近に楽しめる環境」を目指し、日本障がい者サッカー連盟とともに、障がい者サッカーの推進活動も行っている。
JFA内でその主要な担い手となっているのが、人事部の岩田朋之さんだ。岩田さんは小学生時代からサッカーや野球、水泳と広くスポーツに親しみ、社会人になってからも週に2~3回、フットサルを楽しんできた。26歳で難病のレーベル遺伝性視神経症を発症し弱視となってからも、伴走者と走ったり、ゴールボールをプレーしたりするなどさまざまなスポーツにチャレンジ。中でも社会復帰への足がかりにしたいと進学した筑波技術大学で出会ったロービジョンフットサルは、日本代表選手となり、現在に至るまでキャプテンを務めるほど熱中し、それが現在の仕事にもつながっていると語る。
「日本代表活動を通じて弱視の子どもたちと出会い、視覚障がいのある子どもたちのサッカー環境がまだまだ整っていないことを知りました。自分にできることはないか、と考えるようになったことをきっかけに、2017年4月に筑波大学大学院(修士)に進学。アダプテッドスポーツ・障がい者(パラ)スポーツを学ぶことで、障がいのある子どもたちを取り巻く環境を、サッカーを通して改善していきたいと思いが深まり、JFAで働くことに決めました」
現在所属の人事部では、障がい者のサッカー環境の基盤づくりをはじめ、日本障がい者サッカー連盟の教育プログラムの企画・提案・制作および講師役、JFA内のダイバーシティ推進に関する企画・提案、JFAハウス内のバリアフリー化へ向けた改善案提出など、幅広く活動。さらに、今後は障がい者を含めた多様な人たちがサッカーやスポーツを広く楽しめる環境や制度を作っていきたいと思い描いている。
現在の仕事をするうえで絶対に必要という資格はないそうだ。しかし、自身が取得した理学療法士の資格や教職員免許(中高/保健)が活きていると実感しているという。
「当事者でありながら理学療法士の資格を保持することで、病気や障がいについて医学的な観点・視点で理解できますし、教員免許は、障がいに関することを健常の人たちに伝えるうえで役に立っていると思います」
人生をあきらめることなく歩めているのは、サッカーのおかげという岩田さん。その恩返しの気持ちを、他の職員と協力しながらサッカーを通じて届ける、という使命を胸に日々の業務に取り組んでいる。やりがいもある反面、例えば、使用中の音声読み上げのPCの情報の処理が追いつかず業務に支障をきたしかねないこともあるなど、苦労もあるという。しかし、それも多様性への理解を広げるチャンスとして、岩田さんは、できることとできないことを自分から発信することを心がけているという。また、現時点でJFA唯一の視覚障がい者だからこそ、しっかりと足跡を残したい、そして子どもたちに道筋をつけられるような仕事をしていきたいと意気込む。
「サッカーをはじめスポーツは、あらゆる人に『生きる力』を届ける力があると思っています。そのスポーツの持つ力を一人でも多くの人に届けて、障がいのある人もない人も互いに認め合いリスペクトできる社会を作っていきたい。一緒にがんばりましょう!」
【所有している資格】
理学療法士、中学校・高等学校教諭一種免許状(保健)
【おすすめの資格や学問など】
特になし