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トライアスロン
宇田、秦らが東京パラリンピックへ大きく前進! アジアトライアスロン選手権 2021 廿日市レポート
新型コロナウイルスの影響で1年延期されていた「アジアトライアスロンパラ選手権」が4月24日、アジアトライアスロン選手権と同時開催により広島の廿日市市役所周辺特設会場で開かれた。パラトライアスロンは海外選手含む18人の選手が男子4クラス、女子3クラスに分かれて優勝を争った。
東京パラリンピックでメダルを狙える位置にいる男子PTS4の宇田秀生、女子PTS2の秦由加子の両エースも出場し、それぞれ優勝。パラリンピック出場を争うランキングポイントを獲得し、国別出場枠獲得に向けて大きく前進した。
東京パラで二刀流の活躍が期待される土田は欠場
一方、ランキングアップの絶好の機会を失い、崖っぷちの選手もいる。陸上競技・車いすマラソンと2競技での東京パラリンピック出場を期待されているPTWCの土田和歌子だ。
パラトライアスロンの東京パラリンピック国別出場枠は、ITU(国際トライアスロン連合)のパラリンピック出場資格ランキング9位以上の選手に与えられ、その出場枠を獲得した選手が日本代表に選出される。
現在、パラリンピック出場資格ランキング9位の土田は、前日会見で「パラリンピックは私たちにとって大きな目標でありモチベーション。そこに向けて全力で頑張りたいし、明日のレースに向けてしっかり準備していく」と意気込んでいた。しかし、当日の発熱により欠場を余儀なくされ、約1年半ぶりになるはずだったレースへの出場は5月15日に横浜で開催されるワールドトライアスロンパラシリーズに持ち越された。
海外勢に競り勝ち、7月15日まで続く出場資格ランキングレースへの挽回を期す。
男子のエース・宇田秀生は横浜に照準
「目立ちたがり屋なので、一番目立つことができればいいな」
そう前日会見で語っていた男子PTS4の宇田は予告通り、表彰台の中央に上がった。パラリンピック出場資格ランキングもひとつあげて3位に。
だが、フィニッシュ後も喜びが控えめだったのは、海外勢を迎え撃つ横浜シリーズを見据えているからだ。
「オリンピックを目指すレベルの選手をはじめとし、いろんな選手とトレーニングを積めた」というコロナ禍での成長を実感した一方で、「トランジションの動作などレース勘が鈍っている」と課題も口にした。決まれば初出場となるパラリンピックに向けて、アジアチャンピオンとなった宇田は静かに闘志を燃やしている。
女子のエース・秦由加子はバイクで新たなチャレンジ
前回のリオパラリンピックは、廿日市で行われた同大会での優勝を弾みに出場枠を掴み、本番で日本人最高の結果を残した秦。東京パラリンピックのメダル獲得をにらみ、バイクパートで漕ぎ方を両足から片足に変える大きなチャレンジに取り組んでいる。
「全身の力を片足一本に伝えきることができるよう、コロナ禍で外出が難しいときも、積極的に筋トレをして体幹を強化してきた」と秦。
女子PTS2のトップ層にアジア選手はおらず、出場選手はひとりだったが、冷静にレースを組み立て、トランジションも短縮。フィニッシュ後は「いつになく、これまで練習した成果を実感できた」と笑みをたたえた。
今大会の結果を受け、パラリンピック出場資格ランキングは2位に浮上。横浜シリーズでも好成績を収め、本番に向けて自信を深める考えだ。
パラは初のライブ配信。主催者も試行錯誤したコロナ禍の大会運営
今大会はPTVI(視覚障がい)クラスにキルギスタンと香港の選手・ガイドが参加。パラリンピック出場を争う重要なレースに位置付けられており、関西空港から入国した各国の選手団は最低3日間の隔離を条件に出場が認められた。泡の中のように外部から隔離されたバブル形式で開催された大会には、同時開催の健常のアジア選手権と合わせて11の国と地域の選手が参加。空港からホテルのバス輸送、トレーニング場所や時間の制限に加え、多い選手でレースまでに7度PCR検査を行うなど、厳格な対策が施された。
独特な緊張感の中で運営され、通常観客席が設けられるエリアも無観客。表彰式も行われたフィニッシュ地点では、盛り上げ役のDJの声が会場でこだまする寂しさこそあったが、出場した選手たちは今大会を迎え入れた地域の人たちへの感謝を口々に表していた。
また、隣接するショッピングモールでは大型モニターでレースの様子が映し出され、モニター越しに勝負の行方を見守る人もいた。
なお今大会は各部門のレースがYouTubeでライブ配信された。JTU(日本トライアスロン連合)によると今回、パラ部門の完全生配信が国内で初めて実現。オリンピアンによる解説も好評で、今後も継続されることを期待したい。
オリンピック・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長もライブ配信で大会の様子を観たひとり。「本大会が開催されますことは、オリンピック・パラリンピック東京大会の灯を消さないためにも、極めて重要と位置づけておりました。本当に大きな力となります」などと大会側にメッセージを寄せていた。
女子
PTS2:1位 秦由加子
PTS4:1位 谷真海
PTVI:1位 円尾敦子
男子
PTWC:1位 木村潤平
PTS4:1位 宇田秀生、2位 荒力、3位 松居礼大
PTS5:1位 梶鉄輝、2位 佐藤圭一、3位 平出優人
PTVI:1位 米岡聡、2位 高橋勇市、3位 山田陽介
text by TEAM A
photo by Sayaka Masumoto