前編では東京の名所・浅草を観光した一行。(前編はこちら)リオパラリンピックの閉会式でも素晴らしいパフォーマンスをみせた両腕のないブラジル人ミュージシャンのジョナタ・バストスは浅草に大満足してくれました。続いては上野ディナーで‟おもてなし”。ジョナタから見た日本や、プライベートについても話を聞いちゃいました。最後にはおまけのPhotoギャラリーも。
≪おもてなし -其の参-≫ ジョナタが好きな「お肉」を食べに行こう!
浅草を歩き回って腹ペコなメンバーは、美味しいディナーを求めていざ、上野へ。
ジョナタ、日本に来て数日経つけど日本食の印象はどう?
来日してすぐに日本食を食べに行ったんだけど、味付けがしっかりしていてすごく美味しかったよ!
しっかりした味付けが好きなんだね。じゃぁ普段の食事で1番好きな物は何?
お店に入って席に座るやいなや、上機嫌になるジョナタ。
うん、お肉大好きだから! でも、肉にタレをつけて食べるのは苦手なんだ。付けるのは塩だけで良いんだよ。
ジョナタが言うように、ブラジルで肉を食べるなら、塩をかけるのが主流なんだそう。ブラジルの塩は日本のような海から取れる「海塩」ではなく、地中で塩分が圧縮された「岩塩」を食べるらしく、混じりっ気なしの上物の塩で肉との相性が抜群らしい。
ちなみに日本で食べた物の中で、気に入った物はあった?
「たけのこの里」は美味しかった。きのこのヤツも一緒に食べたけど、たけのこの方が気に入ったね。
そんなことを話していると、テーブルの上では肉が焼けていました。
器用にフォークでお肉を端に寄せて…
パクリ。
本当に美味しい! これはスゴイね! ブラジルに持って帰りたいくらいだよ。ブラジル人がここに来たら、かなり気にいると思うよ!
うん、うん。お肉好きと聞いて、その感想がもらえると思ったんだ!
ジョナタにいろんな話を聞いてみよう!
日本に来て数日経っていると思うんだけど、来日する前と後で、日本の印象は変化した?
もともと良いイメージがあったけど、日本に来てさらに良くなったよ。ブラジルはアートや音楽が発展している国なんだけど、日本もそうなんだと感じて親近感が湧いたかな。
あとはブラジルにいた時は「なまもの」が食わず嫌いだったんだけど、こっちに来て食べた刺身はとても美味かったね。
刺身、食べたんだね! 気に入ってくれて良かったよ。
うん。日本人は魚だけを食べているイメージが勝手にあったんだけど、意外とみんな肉も食べるんだなと思ってビックリしたよ……。
日本人も肉が好きな人多いよ~(笑)
ちなみに、日本のバリアフリーについてはどんな印象をもった?
そうだね。やっぱり日本は先進国だから、もともとバリアフリーはしっかりしているイメージはあったけど、来てみると想像していた以上にちゃんとしていたことにびっくりしたかな。
ブラジルは、街を歩く分には問題がないけど、トイレが辛いんだ。ブラジルのトイレは、男性用と女性用しかなくて、障がい者用のトイレが無くて……。僕の場合、トイレに行くためには母親の助けが必要だから、そうするとトイレに行くたびに良い思いをしないよね。
ごくたまに障がい者用のトイレがあったりしても、健常者が使わないように鍵がかかっているから、それを取りに別の場所に向かわないといけない。そういうことを考えると、日本は障がい者に対してとても優しい世界だなって。
とはいえ、ブラジルでもまだまだ良くできる点はたくさんあるんだ。僕のような人間が率先して変えていきたいね。
応援するよ。そういえばリオパラリンピックの閉会式に出演したって言っていたけど、これはどうやって選ばれたの?
Instagramに載せた動画が広まって、その投稿を見た運営の人からオファーが来たんだ。あれには本当にビックリしたよ。
もともとInstagramは主にプライベート用で使っていたんだけど、音楽も載せていたんだよね。やっていくうちに音楽に対してフィードバックが来るようになって、これは便利だなって思っていたんだ。
そうなんだ。僕ももっと活用しなきゃな。
話は変わるけど……、今、ジョナタは彼女はいるの?
仕方ないな(笑)今日は特別に教えてあげるよ。
今はいないんだ。いないから、これまでの人生の中でも今は、かなり自由に生きているんだ。
自由に生きるのは、彼女がいたら少し難しいと僕は思っていて……。仕事上、いろんなところに行くから、そこに理解がないとね。今だって10日間も日本にいるし。
たしかに10日間の海外出張が頻繁にあるとすると、恋人としては心配にもなるよね……。結婚願望とかはあるの?
そうだね。今はとにかく、この瞬間を生きることが好きなんだけど、将来的には自分の持っている “志” を子どもに受け継ぎたいと思っているんだ。例えば僕の母の話をすると、母は問題が起こる前に気付く努力をする。要するに “後悔” をしないようにしているんだよね。それは知識によってなり得るものだと思っていて……。僕はそれを母から教えて貰ったんだ。こういったことを、自分の子どもにも教えてあげたいなって。
しっかりした考えを持ってるね。ジョナタ、今何歳だっけ?
でもそれはたぶん、早くからいろんな困難に出会ったからなのかな。その困難を乗り越えることができたから、いまこうやって自分のやりたいことに素直に生きていけると思うんだ。今の若い人たちは、“自分の意思で考えること”を放棄しているんじゃないかなって思っていて。でもそれじゃあ、これから何年、何十年生きていく中でいろんな壁が立ち塞がってきて、その時に立ち向かえなくなっちゃうと思うんだよね。やっぱり日々いろいろな事を考えていた方がいい。自分はそこを伸ばしていきたいなって。
あと、ブラジル人は陽気で元気だって思われるかもしれないけど、みんな多種多様だからね(笑)
本当に勉強になるなあ。ブラジルって日本の反対側にあって、住んでいる人がどんな生活をしているか全然想像できないけど、いつか行ってみたいよ。
本当に!? もしブラジルに来てくれたら、ぜひうちに寄ってね。とっておきの肉料理「シュラスコ」をごちそうするから。
うわ、それメッチャ食べたい。お金と時間が手に入ったら必ず行くよ!
ジョナタへの「おもてなし」は成功した…?
約半日ではありましたが、初来日となったジョナタへの“おもてなし”がこれにて終了。
侍、浅草めぐり、そして焼肉と案内した一行ですが、果たしてジョナタは楽しんでくれたのでしょうか。
今日は少しの時間だけど東京をまわってみて、どうでした?
とてもおもしろかったよ。ブラジルにはない、日本ならではの場所をたくさん見られて、良い刺激になったかな。ブラジルの友達に、自慢したいくらい! 本当にありがとう!
嬉しい!
これで僕たちは、“友だち”ってことで良いんだよね……?
もちろんだよ! またどこかで、必ず会いたいな! 今日は本当にありがとう!
初めて外国人の友達ができた気がする……。こちらこそありがとう!
—後日—
Instagramで、ジョナタからフォローとコメントが来た!
ちゃんと覚えていてくれて良かった……!
今回の素晴らしい出会いに感謝。きっとまた会えたらいいな。
ジョナタ・バストス
3歳のときに地元教会で歌い始め、6歳から祖父にキーボードを習う。12歳頃からリオデジャネイロ内各地で演奏や講演活動。その頃に、母親のギターで遊び始めたことがきっかけで、ギタリストを目指すようになる。ギターをアンプとつないで足での演奏を可能にした「ギターペダル」を武器に、弦楽器に没頭。ブラジル全土をまわりながら演奏スキルを磨き、2010年にはソロ奏者としてギターリフを習得。国内トップアーティストらと共演を果たし、2016年には英テレビ局が制作したパラリンピックのプロモーションビデオにピアニストとして抜てき。YouTubeで800万回以上再生され、リオパラリンピック閉会式でパフォーマンス。ピアノ、ギター、さらにはドラムまでを演奏する。
PHOTO GALLERY
text by Ryo Nagahashi
edit by Ryotaro Hada