過去最高の1万7100人が盛り上げたパラ駅伝 in TOKYO 2018 ベリーグッドとちぎが2連覇を達成!
日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)は3月4日、駒沢オリンピック公園陸上競技場及びジョギングコースで、パラスポーツイベント「パラ駅伝 in TOKYO 2018」を開催した。3回目となる今年のパラ駅伝は、14都県に加え、初の海外からの参加となるラオスチームが参戦。計18チーム、162名のランナーが参加し、全員が完走。全チームが途切れることなくタスキをつないだ。また、会場には1万7100人の観客が来場。スペシャルサポーターとともにランナーたちの熱い走りを盛り上げた。
晴天の幕開け
開会式は、山脇康パラサポ会長の挨拶に始まり、パラサポ特別顧問の小池百合子東京都知事、鈴木俊一東京オリンピック・パラリンピック担当大臣、林芳正文部科学大臣らが登壇。続く国歌斉唱では、昨年に引き続き全盲のシンガーソングライター木下航志さんが務め、青空にふさわしく澄み渡る歌声を会場に響かせた。
選手宣誓は、各チームの注目選手である1区を走る視覚障がいの伊藤久代選手(新潟コメット)、2区・聴覚障がいの髙橋功太選手(チーバくん)、7区・女子健常ランナーの鈴木葵選手(福島ピーチダイヤモンド)、8区・車いすの塚原心太郎選手(山梨Meteor)が行った。
開会式前から、パラサポのスペシャルサポーター稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんが盛り上げ、多くの観客が注目した。「最初は緊張したけど、本番に強いので(笑)全力で走ろうと気合いが入った」と11歳の塚原選手は笑顔をのぞかせた。
パラ駅伝は、1チーム9名(伴走ランナー1名含む)、様々な障がいのあるランナーと健常者のランナーで構成され、1区間(各区間共通2.563Km)合計20.504kmを走りゴールを目指す。年齢層は幅広く、今大会のランナー最年少は11歳、最年長は67歳、さらに現役のパラアスリート、パラジュニアアスリート、元スポーツ選手、市民ランナー、学生など多方面から参加者が集まっている。また昨年に引き続き、よしもと芸人らにより構成された「TEAM よしもと」も参戦し、アイマスクをするなど選手とほぼ同じ条件で走った。
競技は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長の号砲で一斉にスタートした。
「ベリーグッドとちぎ」がV2
1区(視覚障がい&伴走者)から見逃せない展開になった。2008年北京パラリンピック日本代表選手で、前評判が高かったのが「ベリーグッドとちぎ」の加治佐博昭選手&伴走の豊島聡選手。その2人を抑え、一着で2区につないだのは、「福島ピーチダイヤモンド」の星純平選手&伴走の山田泰広選手だった。
「チームには11歳や18歳の若い選手がいたので、とにかくトップでタスキをつなげたいという思いが強かった」と星選手。
伴走の山田選手は振り返る。「ライバルのとちぎよりいいスタート位置にいたので、先頭で逃げ切ったほうが勝てると思っていた。実は大歓声のなかで声が伝わりにくく苦戦したが、何度も声を張り、あとは腕の感覚で必死にガイドした」。一方の加治佐選手は「星選手は同じくらいの速さだと思っていたが、なかなか追いつけなかった」と悔しさをにじませながらも、「今日は走りやすい気候で、気持ちよく走れた」と流れる汗をぬぐった。
「福島ピーチダイヤモンド」は11歳の3区・岩本望愛選手が自己ベストの走りでつないだものの、5区で首位が「ベリーグッドとちぎ」に入れ替わる。「ベリーグッドとちぎ」の6区・浅野俊也選手は、その中川壮気選手のタスキを「なんとかキープしようという責任感」で激走。続く、7区の宇佐美佳菜選手も快走し、「笑顔でタスキをつなぐことができてうれしかった」と笑顔を咲かせた。
優勝は、そのまま首位を守った「ベリーグッドとちぎ」。昨年に続く連覇で、タイムは1時間24分08秒だった。「福島ピーチダイヤモンド」は2位、「東京わくわくエンジョイ」が3位だった。
ひとつでも順位を上げるために
今年も力走する選手の姿が光った。
17位でゴールした西川峻平選手(チーバくん)は、最後尾のよしもとランナー、ザツネハッチャン常道裕史選手とともに大声援を浴びた。完走を後押しした声援に感謝し「疲れたけど、本当に楽しかった」とレースを振り返った。
また、知的障がいランナーによる5区で区間賞を受賞した狩野大介選手は(コバトン&さいたまっち)は、チームメートから拍手でたたえられていた。「パラ駅伝には初参加で、まさか区間賞をもらえるとは思っていなかった。今後も一生懸命練習し、タイムを更新していきたい」と元気いっぱいにコメントした。
各チームによるたすきリレーの工夫も見られた。車いすバスケットボール用の車いすで走った「しなのパープルズ」のアンカー・新津和良選手は「チーム練習ではタスキリレーを何度も練習した。昨年はタスキをただかけてもらうだけだったが、今年は助走をつけながら受け取るように変えて、それがすごくうまくいった」といい、区間賞の走りを見せた。
声援を力に変えて
とにかく応援にパワーをもらったと口にする選手が多かった。
片足義足で走るパラトライアスリートでもある中山賢史朗選手(東京わくわくエンジョイ・6区)は「走る区間の2.5kmすべてに応援してくれる人がいて、疲れを感じずに走れる喜びを感じた」と笑顔で語り、「普段は個人競技ということもあって、皆と一緒に走るパラ駅伝はリフレッシュになる」と競技者として駅伝に参加する意義を語った。
今大会最年長の67歳で、「生涯、障がい者スポーツに関わり、2020年はボランティアで参加したい」という「TEAM MIYAGI」の3区・菊池まり子選手も、「場内は全国障がい者スポーツ大会のようなすごい盛り上がり。沿道の人も、名前を呼んで応援してくれてうれしかった」と顔をほころばせた。
また、車いすテニスで東京パラリンピックを目指す高室冴綺選手(東京わくわくエンジョイ・3区)は、3年連続となる区間賞を獲得。「来年からはパラリンピックの選考が始まる。これが最後の駅伝参加かなと思って参加した」とその思いを明かし、「パラリンピックでメダルを獲ります!」と誓ってくれた。
元サッカー日本代表の北澤豪さんは、東京ランナーズの一員として4区を走った。 「このチームに入ったときから障がい者とか健常者の垣根というものがなかった。東京パラリンピックに向けて、よく共生社会の実現について議論したりするけど、それが駅伝ではみんな無意識にできていたし、スポーツのチカラを改めて感じる機会になった」と実感を込めた。
一体になった観客席
閉会式では、優勝した「ベリーグッドとちぎ」にパラサポ会長の山脇康から優勝杯が授与され、延與桂都知事代行からは東京都知事賞の表彰状が贈られた。
“最も印象に残ったチーム”に贈られる日本財団賞は、9位の「ラオススースーチーム」が受賞。アンカーのピア選手は「チームメートが待っていてくれたから最後まで走れた。観客の皆さんには、日本人だけでなく私たちにも温かい声援を送ってくれてありがとうと言いたい」とコメントした。
今回は、タカアンドトシさん 、次長課・河本準一さん、人気YouTuberのはじめしゃちょーさんも応援に駆けつけ、観客とともに2区を走る聴覚障がいランナーに手話で応援を送った。さらに、6区の肢体不自由ランナーがフィールドに帰ってくると、稲垣さん、草彅さん、香取さんらが観客からウェーブで出迎え、観客が一体になる場面も。ランナーと並走した香取さんは「青空の下で走るのって本当に気持ちいい!」と声を弾ませた。
閉会式の後は、稲垣さん、草彅さん、香取さんによるスぺシャルライブ。また、3人からビッグニュースとして、パラスポーツ応援チャリティーソング『雨あがりのステップ』発売の発表がアナウンスされた。この楽曲はパラスポーツ応援チャリティーソングとしてiTunes Store限定でリリースされ、売上金額の全てが寄付され、パラサポを通じてパラスポーツの支援にあてられる。
イベント後、3人は2020年の東京パラリンピックに向けて「選手やボランティアに寄り添い、ちょっとしたことでもお手伝いできれば」とスペシャルサポーターとしての意気込みも語った。
9日からは平昌2018冬季パラリンピックが始まる。また、東京2020パラリンピックも大会開催まであと2年半を切っている。パラ駅伝の来場者も年々増え、今年は昨年より約6千人上回った。パラスポーツへの関心が高まるなかで、レース中もSNSへの投稿を呼びかけ、会場が一体となって日本へ世界へ発信した。来場者はもちろん、選手、ボランティア、主催者、サポーターなど関わったすべての人にとって、パラスポーツをより身近に感じられたイベントになったに違いない。
text&photo by Parasapo