スノボ成田緑夢 挑戦の心を貫いた「完璧なメダル」/平昌パラリンピック

スノボ成田緑夢 挑戦の心を貫いた「完璧なメダル」/平昌パラリンピック
2018.03.13.TUE 公開

今大会から、正式競技に新たに加わったスノーボード(スノーボードクロス)で成田緑夢(男子LL2クラス)が銅メダルを獲得した。強豪を抑え、初出場で手にしたメダルを「完璧なメダルです」と素直に喜んだ。

挑戦を辞めないからこそ勝ち得る

成田は予選1本目で58秒21をマークし、そのまま1位通過。一発勝負の決勝トーナメントでは、1回戦で韓国選手を圧倒すると、準々決勝でカナダ選手をスタートから引き離して準決勝に進出した。

前回のソチ大会でメダルを独占したアメリカチームのひとり、キース・ガベル(予選4位)を相手に、序盤からリードを奪ったものの、荒れた斜面にボードを取られて転倒。優勝候補の一角を担っていた成田が敗退した瞬間だった。
※ソチ大会ではアルペンスキーの1種目としてスノーボードが実施された。

「すごく荒れたコースで、アウトサイドを滑れば、バーンが荒れてきてもゆるくないかなって考えていました。でも、実際はアウトバーンでさえもゆるくて、それでコケてしまいました」

それでも後悔はない。挑戦した上でのミスだったからだ。

金メダルを獲得したマッティ・スール・ハマリ(フィンランド)も「コースはとても荒れていて、でこぼこだった。自分のスタイルで滑ることができなかった」という難しいバーン状況。スタート機器の故障で約40分間中断し、コースコンディションの変化を読めなかったことも影響した。

大会前に「常に挑戦できるような前向きな姿勢で平昌に臨めたらいい。どんな状況においても挑戦の心を忘れずに戦えたらなと思っています」と語っていた成田は、レース後に「その目標は全部クリアしたと思っています」とすがすがしい表情で語った。

パラリンピック初出場ながら攻めの滑りを見せた成田緑夢 ©Getty Images Sport

前回王者と争った銅メダル

「コケたところで大会は終わってない。気持ちが途切れることはなく、集中していました」

銅メダルをかけた3位決定戦の相手は、前回王者のエヴァン・ストロング(アメリカ)だった。2人はワールドカップなどで何度も対戦しており、互いに刺激し合える存在だ。ストロングは「2人がともにメダリストになるために、決勝で対戦したい」と話していたが、メダルを獲得するかしかないかという瀬戸際で争うことになった。

だが、成田は自身がテーマに掲げる「次なる挑戦」を課したことで、最大のライバルである相手よりも、自分自身に向き合うことができたのだ。

その挑戦とは、各クラスの選手が滑走した後の荒れたバーンで「アウトとかミドルとかってラインを決めるのではなく、すべてを踏まえた上でラインをチョイスする」というものだった。過去に一度もやったことのない新たな“挑戦”。3位決定戦という大事な場面でも、それを辞めなかった成田は「自分自身によくやったと言ってあげたい」と満面の笑みで振り返った。

毎回挑戦を課し、パラリンピックでは成長を実感できる喜びも感じた。
「前の僕だったら、転ばないように守りの滑りをしよう、と思ったはず。でも挑戦は辞めなかった」

レースはスタートの速い成田のすぐ後ろをエヴァンが追う見ごたえのある展開だった。しかし、エヴァンは中盤でコースアウト。そのままフィニッシュした成田が銅メダルを獲得した。

「今日は非常に厳しいレースだった。パラリンピックのチャンピオンとしてタイトルを守りたかったが、今日は“僕の日”ではなかった
そうエヴァンはコメントした。

「挑戦の気持ちを忘れず挑みたい」

「前回のパラリンピックのメダリストも、シーズンチャンピオンも全員が勢揃いしているパラリンピックの舞台で、トーナメントを勝ち上がれた。トップと争えていた証拠なんじゃないかな」

そう素直に喜んだ成田。16日のバンクドスラロームの目標を聞かれ、
「目標は変わりません。挑戦の気持ちを忘れず挑めたらと思います」
と話した。

そして、夜のメダルセレモニーで見せたのは、無邪気な少年のような笑顔。

「想像してたより重たくて、嬉しいです。今までもらった中で一番重たいメダルだと思います。メダルに深い意味はないですが、ケガをした僕がここまで上がってきたっていうストーリーを多くの人と共有をしたいです」と話し、最後ははにかんだ。

挑戦し続けた結果に銅メダルがついてきた ©Getty Images Sport

text by Asuka Senaga

スノボ成田緑夢 挑戦の心を貫いた「完璧なメダル」/平昌パラリンピック

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