こんにちは、ライターの長橋です。突然ですがみなさんは、「ウィルチェアーラグビー」というスポーツをご存知でしょうか?
ラグビーと言えば……
このように、血気盛んな男達が己のパワーと頭脳を駆使して戦う、闘魂溢れるスポーツを思い浮かべると思います。
が……! 実はパラリンピック競技にも、この「ラグビー」という名を冠した競技があるのです。それが、「ウィルチェアーラグビー」です。僕は今回初めてこの競技を知ったのですが、考えてみると…
車いすでラグビーをするって、どうやってやるの……?
鉄の塊と鉄の塊がぶつかって、怪我しないの……?
ルールが難しそうだけど、面白いの……?
という多数の疑問が出てきました。
そこで、今回はウィルチェアーラグビーの魅力や面白さを直に感じるために、実際に試合を観戦しに「千葉ポートアリーナ」へやってきました!
早速、会場で試合を観てみたのですが……
あれ? 何だか想像していたラグビーのイメージと違うなぁ。
これはルールが分からないと楽しみが半減しそうだ。ということで、詳しい人に「ウィルチェアーラグビー」についてねほりはほり聞いてきました。
ウィルチェアーラグビーってどんなスポーツ? 教えて!
詳しい人:パラサポ 前田
日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)のスタッフ。ウィルチェアーラグビーをきっかけにパラスポーツにハマった、人呼んで『最強パラスポーツ女子』。
詳しい人を聞いて歩いたら前田さんにたどり着きました! 早速ですが、ウィルチェアーラグビーって、どういう競技なんですか?
はい、簡単に言うとこの競技は、ラグビー、バスケットボール、バレーボール、アイスホッケー等の要素が組み合わさったスポーツです。1試合で8分間のピリオドを4回、4対4でおこないます。ラグビーという名前が付いていますが、一般的なラグビーと違うところが多いと思いませんか?
確かに! よく見ると、ボールが楕円形のラグビーボールじゃなくて丸いバレーボールみたい。あと、ボールを前にパスしていますね。一般的なラグビーって、後ろにしかパスをできないんじゃなかったかな?
はい。お気付きの通り、ウィルチェアーラグビーではボールを前にパスしても問題ありません。膝の上に乗せて走ることもできます。その場合は、車いすを何回こいでも大丈夫ですが、10秒以内にドリブル又はパスをしなければいけないというルールもあるんです。このように一般のラグビーとはルールが異なっているんです。
初心者目線から見ると、「車いすバスケットボール」と似ているように思ったのですが…。
よく言われるのですが……。一番大きな違いは、ウィルチェアーラグビーはタックルなどのコンタクトが認められているため、車いすが頑丈に作られており、オフェンス用とディフェンス用でも形状が異なるんですよ。北米ではマーダーボール(殺人ボール)とも呼ばれるほど、車いす同士がぶつかり合う激しいスポーツなんです。
激しいぶつかり合いはOKなんですね。ラグビーらしい要素がでてきた! あとは、ゴールも独特ですね? コーンとコーンをつないだ線がゴールラインになるのでしょうか?
はい。ボールを持った選手の車いすの車輪が、そのラインを超えると得点になります! これもラグビーらしい要素のひとつです。ちなみに「ゴールライン」の呼び方が2018年1月より「トライライン」という呼び方に変わり、ゴールすることを「トライ」と呼ぶようになりました。
タックルとトライがあって、でもパスはどこでもOK。ラグビーとバスケが組み合わさった競技みたいですね。
そうですね、その他の違いとしては、対象となる選手が違うんです。ウィルチェアーラグビーは手と足の“四肢”に障がいがあることが条件になるので、車いすバスケットボールに出られるからといってウィルチェアーラグビーにも出られるかというと、そうではありません。
ウィルチェアーラグビーの選手たちのほうが、障がいが重いんですね。
そうなんです。手と足の両方に障がいのある選手が対象となり、障がいに応じて0.5~3.5点のポイントが付与され、コート上にいる4名の合計が8.0以内になるようにチームを組むというルールがあります。
要するに、障がいが軽い人だけで構成されたメンバーだけを集めると8.0ポイント以上になってしまうので、試合に参加できないってことですね?
はい。障がいが重い選手も必ずメンバーに入れなければなりません。障がいの程度が重い方はディフェンスをやられていることが多いですね!
なるほど……。それによって戦術が大きく変わってきそうですね。
マーダーボール(殺人ボール)と呼ばれる訳
ウィルチェアーラグビーは、夏のパラリンピック競技の中で唯一車いす同士でぶつかり合いが認められる競技なんですよ。
車いすと車いすがぶつかり合うとすごく大きな音で、痛そうなんですけど、選手のみなさんはぶつかり合ってケガとかしないんですか?
たしかに音や見た目は激しいのですが、車いす同士がぶつかるだけなので、衝撃はありますが痛みは少ないんですよ。
そうなんですね……! パラリンピックの競技がこんなに激しいスポーツだと思わなかったので、ちょっとビックリしてしまいました。
12秒ルールと40秒ルールが試合をより面白くしている!?
さっきから電光掲示板の得点表示の上で秒数がカウントされているんですが、あの「数字」はなんなのでしょうか。
これはですね、12秒ルールと40秒ルールのための表示です。
12秒ルールは12・セカンズ・バイオレーションと呼ばれるのですが、自陣のコート(バックコート)でボールを入手してから、12秒以内に敵陣のコート(フロントコート)にボールを持ち込まなければならないというルールなんです。違反した場合は、相手チームにボールの所有権が移ります。
12秒以内ですか!? ボールを手に入れたら急いで相手コートに入らないといけないんですね。
はい。また、40秒ルールは、40・セカンズ・バイオレーションというものでして、ボールを所有したチームは、40秒以内にスコア(トライ)しなければならないというもの。スコアできなかった場合は、相手チームにボールの所有権が移ります。
ということは、40秒以内に必ずボールの所有権が入れ替わるってことですね!
そういうことです! これはウィルチェアーラグビーにエンターテイメント性を持たせるためにできたルールなんです。試合の展開が速いので観ている私たちも目が離せなくなります。
たしかにずっと同じチームがボールを持っているわけじゃないので、サッカーやバスケのように攻守がすぐに入れ替わって、面白い!!
ウィルチェアーラグビーのようなパラリンピック競技は、まだまだルールが知られていないことが多いんです。そうすると、「ルールがわからないから面白さがわからない」となってしまって。
そう言っていただけると嬉しいです! 審判のジェスチャーがわかるとさらに面白いんですよ。
※参考 『審判ジェスチャー集』(外部サイト:日本障がい者スポーツ協会)
今日はいろいろと教えていただきありがとうございました!
試合の迫力をぜひ生で体感してほしい!
パラリンピックの競技というと、サッカーや野球と比べ、どうしても遠いものに感じるかもしれません。
ただ、前田さんがおっしゃっていたように、実際にルールを知るとその競技としての魅力に気づくことも。それはウィルチェアーラグビーのみならず、他のパラリンピック競技にも言えることだと思います。
今回、ウィルチェアーラグビーのことが少しお分かり頂けましたでしょうか。ということで、ぜひ一度会場で観戦して肌で感じてもらいたいですね!
後編では選手の方にお話を聞いていきたいと思います。
(後編に続く:5/22公開)
さらに詳しいルールは『かんたんウィルチェアーラグビーガイド』(外部サイト:日本障がい者スポーツ協会)から
text by Ryo Nagahashi
一般社団法人 日本ウィルチェアーラグビー連盟
Facebook:https://www.facebook.com/JWRF.jp/
公式サイト:https://jwrf.jp/
2018ジャパンパラウィルチェアーラグビー競技大会
http://www.jsad.or.jp/japanpara/wheelchair-rugby/
≪ 2018ジャパンパラウィルチェアーラグビー競技大会 ≫
日程:2018年5月24日(木)~ 5月27日(日)
会場:千葉県千葉市・千葉ポートアリーナ