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車いすテニス
車いすテニス女子、TOKYO 2020への切符争奪戦が激化! 上地を追う注目の次世代選手たち
日本の車いすテニスの女子選手の層が厚くなってきている。日本の車いすテニスの女子プレーヤーといえば、世界ランキング1位の上地結衣だが、上地と同年代のプレーヤーたちの成長も著しい。東京パラリンピックに向け、代表争いが激しくなりそうだ。
ジャパンオープンでベスト4に躍進した田中愛美
5月14〜19日の飯塚国際車いすテニス大会(ジャパンオープン/福岡県飯塚市)で、日本の田中愛美がベスト4に進出した。
田中は1996年生まれの21歳。19歳で東京・有明で開催された車いすテニスの国別対抗戦「ワールドチームカップ」に初めて日本代表として出場。当時は4選手中4番手だったが、今では上地に続く国内2番手の選手へと成長している。今回のジャパンオープンでは、第2シード、世界ランキング3位のアニーク・ファンクート(オランダ)に6−0、6−4で勝利し、ベスト4と好成績を残した。
田中は、「アニークとの試合は、私は何もしていないという感じだったんですが、相手の調子が悪かったとはいえ、そつなく試合ができて勝てたのは成長だと思います」と振り返った。
以前は、なぜ負けているのかを客観的に分析できず、戦うビジョンが描けないまま試合をしていた田中。だが、ランキング上位の選手たちとも競るようになり、「全然届かないと思っていた選手の背中が見えるようになってきている」と成長を実感する。そして、国内の若手プレーヤーにもライバル心を燃やす。
「少しでも上地選手との距離を縮めないといけない。他のプレーヤーに、『上地選手の前に田中を倒さなくてはいけない』と思われるようになりたい」と話す。
「初めてワールドチームカップに出たときは、経験を積むために4番手として出させてもらいました。その年は、ひとりだけリオパラリンピックの内定ももらえなくて悔しい思いをしました。リオの年が終わってから、東京パラリンピックへの切符も見えてきて、着実に成長していると思います。でも、リオパラリンピックが終わった年から新しく出てきた選手がたくさんいて、上だけ見ているだけじゃダメなんだという気持ちが強くなっています」
ライバル同士で切磋琢磨
田中が話すように、リオパラリンピック後、若手選手が急成長している。上地、田中に続く、国内3番手の大谷桃子(1995年生まれ、22歳)、4番手の高室冴綺(1995年生まれ、23歳)、そして船水梓緒里(2000年生まれ、17歳)の3名は、とくに注目度が高い。おそらく上地、田中を含めたこの5名が、東京パラリンピックへの切符をかけて争うことになるだろう。
とくに大谷の出現は女子車いすテニス界を驚かせた。2016年の6月ころから車いすテニスに取り組み、その年の国内最終戦、「全日本選抜車いすテニスマスターズ(JWTマスターズ)」に、大谷は出場を果たした。JWTAマスターズは、その年の国内上位8名しか出場することのできない大会だが、大谷は、車いすテニスを始めたその年にマスターズに出場し、しかも決勝に進出するという快挙を成し遂げた。
大谷は、高校卒業後に車いすの生活となるまで健常のテニスで活躍し、インターハイに出場するほどの実力者。本格的に車いすテニスを始めて2年弱だが、2017年にはITFフューチャーズの大会で2度、ITF3の大会で3度の優勝を経験している。2度目の出場となった今回のジャパンオープンでは、ベスト8に進出し、5月21日付け世界ランキングでは18位となった。
高室も、2016年からJWTAマスターズに初出場を果たし、現在世界ランキング23位と順位を上げてきている。
17歳の船水は世界ランキング27位と、ランキングだけを見れば国内5番手に位置するが、船水は2016年にジュニアの日本代表選手としてワールドチームカップに出場した経験を持つ。ジュニアとはいえ、日本代表として世界のプレーヤーと戦った経験は、他の選手たちにはない大きな武器だ。2017年は、海外ツアーにも積極的に参戦し、ITFフューチャーズの大会で優勝も果たしている。ジュニアながら、JWTAマスターズには2016年から出場を果たすなど力を付けてきている。
激しい代表争いに注目
14歳のときに国内の頂点に立って以降、日本の車いすテニス界を牽引し続けてきた上地は、ここ数年、国内女子選手のなかでただ一人、世界のトップレベルでプレーしている。一方で、一気に国内トップに駆け上がってきた田中、大谷、高室、船水。この4選手が世界ランキング10位以内に名を連ねる日もそう遠くはないはずだ。
東京パラリンピックに向け、ますます激しくなる代表争いに目が離せない。
text by Tomoko Sakai
photo by Akira Ando