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車いすカーリング
大きなプレッシャーを背に。車いすカーリングは自国開催の中国が2連覇の偉業
国家水泳センターで行われた北京冬季パラリンピック・車いすカーリング決勝は、開催国の中国が8対3でスウェーデンを破り、2連覇を達成した。
決勝戦にふさわしい好ゲームだった。相手のストーンを弾くたびにホームの大声援を受ける中国代表。対するスウェーデンも高いショット率で応戦し、第4エンドで1点のスチールに成功する。続く第5エンドもガードを配置し、中国の追撃を許さない。だが、ここからが中国の見せ場だった。スキップの王海濤がデリバリースティックを時計周りに押しながら回転をかけたストーンは、前方にあったスウェーデンのストーンをすり抜けて相手の裏側へ。なんとか一点に抑えたいスウェーデンは時間を使って作戦を練るが、スキップの渾身の一投は無情にもハウス外側へ伸びていく。その結果、中国が4点を追加し、ビッグエンドで逆転した。
第7エンドも中国の勢いは止まらない。中国の王がスウェーデンのナンバーワンとナンバーツーをダブルテイクアウトしてスウェーデンの得点を阻止。結果的にこの投球が試合を決定づける一投となった。
プレッシャーに打ち勝った精神的強さ
光ったのは、中国チームの強靭なメンタルだ。相手が崩れるまで我慢の展開を耐え忍び、チャンスでしっかりと決めた。
王はほっとした表情で語る。
「第4エンドで相手にスチールを許したため、大量得点する必要があったが、今日は自信があった。自分たちがやるべきことを遂行しました」
中国チームへの重圧は計り知れない。自国開催のパラリンピックを控えた前回大会で金メダル。今大会こそ、6競技中5競技で18個の金メダルを獲得している中国勢だが、平昌大会で金メダルは車いすカーリングのみ。今大会の顔として連覇が期待される存在だった。
王はプレッシャーの大きさをこう表現した。
「大きな岩を肩に背負っているような感じでした」
実際に、11チームによる総当たり戦の予選では、その重圧から連敗でスタート。ヘッドコーチの岳清爽は「予選は(連覇したいという)思いが強すぎた。決勝はとにかくリラックスして落ち着いてプレーしようと話した」と振り返る。
プレッシャーをはねのけて成功させていくショット率の高さは、練習に裏打ちされた自信によるものだ。この4年間、代表メンバーから外れた選手を含む約12人が同じ釜の飯を食い、ほぼ自宅に帰らずカーリング三昧だったという。今大会は決勝でリードの女性プレーヤー閆卓のテイクアウトが100パーセント、セカンドの張明亮のドローが100パーセント、サードの陳建新の合計ショット率が84パーセントと高い数値を残し、スキップ頼みではない、チーム全体のレベルアップを感じさせた。
「本当に幸せです。過去数年間に費やしてきたすべてのハードワークは無駄ではなかった。コーチに感謝したいですし、国に感謝したいです。とくに母校のハルビンスポーツ大学が私を育ててくれたことに感謝します」(王)
チーム一丸で目指した2連覇
チームの結束力もうかがえた。車いすカーリングではストーンをリリースする際に、ブレないようにチームメートが車いすを固定するが、王が投げるときは二人がかりで車いすを抑える。それは、まるでチーム全員の気持ちをストーンに伝えているように見えた。
また、一般のカーリングと異なり、スイープがないのも特徴だが、中国チームはリリース後、ストーンの行方を追いながら「ウォー」(スイープを止めるという掛け声)と叫び、止めたい場所に向かって念を送る。スタンドの半分を埋めた招待客による「加油!」(日本語で「がんばれ!」)という声援も相まって最高のホームアドバンテージを生み出した。
金メダルを胸にし、「4年前の金メダルよりも重く感じます」と王。
さらに3連覇への挑戦も視野に入れている。記者に次のパラリンピックを目指すか聞かれると、王は迷いなく言った。
「国が私たちを必要としている限り、そして私たちが十分な力を持っている限り、私はミラノ・コルティナダンペッツォにいます」
会場にこだまする歓声は、メダルセレモニー後もしばらく鳴りやまなかった。
text by Asuka Senaga
photo by Getty Images Sport